日本人の女性のうち、9人に1人が生涯のうちに乳がんに罹患(りかん)していることをご存じですか。がんを早期に発見して早期に治療を行えば、生存率は高いといわれていますが、「痛そう」「恥ずかしい」という理由で乳がん検診を積極的に受けたくない人が多いのも事実です。Lily MedTech(リリーメドテック)(東京・文京)が開発した乳房用リング型超音波画像診断装置 「COCOLY(ココリー)」は、乳房を圧迫したり近く見られたりすることなく、乳がん検診ができる装置です。同社で代表取締役を務める東志保さんは高校生のとき、母親をがんで亡くしたことがきっかけで、起業したといいます。COCOLY開発の背景や、乳がん検診にかける思いを東さんに聞きました。
東京大学と共同で乳房用画像診断装置を開発
COCOLYはベッド型の検査装置です。受診者がベッドの上でうつぶせになり、ベッド中央にある直径30cmほどの穴に片方ずつ乳房を挿入すると、穴の中にあるリングアレイプローブ(リング型の超音波送受信機)が動き、乳房を3D(三次元)で撮影します。
Lily MedTechが創業したのは2016年。東京大学の医学系研究科と工学系研究科と共同で開発し、5年の月日をかけて、商品化にいたりました。代表の東さんは宇宙工学を専攻していましたが、母親ががんで闘病していた体験を基に、「『乳がんと闘う』という言葉のない世界にしたい」という思いから、医療機器業界に飛び込んだといいます。