「真のデジタル世代」といわれるZ世代。SNSを駆使して情報収集・自己発信することにたけているが、その半面、SNS疲れを起こしているともいわれる。muute(ミュート)はそんなZ世代の心の悩みに着目し、「書く瞑想」と呼ばれるジャーナリングを用いたアプリ。なぜ、今の時代に「あえて誰ともつながらないアプリ」を開発したのか、提供元であるミッドナイトブレックファスト代表の喜多紀正さんとプロダクトデザイナーの岡橋惇さんに聞いた。
Z世代の悩み 「自己の空洞化」を救いたい
「SNSネーティブ」「真のデジタル世代」といわれるZ世代。生まれたときからインターネットやスマートフォンが身近な環境にあり、早期からSNSを上手に使い、情報を収集・編集・自己発信するのは、お手のものだ。ダイバーシティ、SDGsなどの時代の流れにも敏感で、「自分らしく生きること」に価値観を感じている人も多い。
しかし、プロダクトデザイナーの岡橋惇さんは「自分らしく生きたいけれども、実は自分のことをよく分かっていない人も多いと思います。それがSNS疲れやSNS離れの原因になっているのでは」と分析する。
Z世代はSNSを駆使してコミュニケーションを取るのが得意だが、他人の目が気になってしまう。親友しか見られない「鍵アカ」でもネガティブな発言をするのははばかられ、なかなか本心が言えない。その結果、SNS上では鍵アカ、趣味のアカウント、就活やビジネス向けにはフェイスブックと複数のツールを使い分けている人もいる。
「それはすごく時代にフィットしていますし、炎上リスクを理解しているZ世代ならではの使い方です。でも、いろんなアカウントを使い分けて、ふと自分に立ち戻ったとき、『いったい自分は何者なんだろう?』という自己の空洞化が起きていると思います」(岡橋さん)
muuteはそうしたZ世代の悩みに着目し、「書く瞑想(めいそう)」ともいわれる「ジャーナリング」をデジタル化したアプリだ。

ジャーナリングは紙とペンを用意し、自分が思っていることをひたすら書いていく。日記と違うのは、一日を振り返って整理して書くのではなく、実況中継のように頭の中に思い浮かんだことをそのまま書いていく点だ。
米国ではグーグルやフェイスブックといった大手企業がマインドフルネス研修の一環として取り入れ、話題となった。また、フェイスブックのシェリル・サンドバーグCOOが夫を亡くしたとき、立ち直るためにもジャーナリングを活用したことでも知られている。