夫婦別姓が認められていないのは先進国で日本だけといわれ、女性の生き方を制限する伝統的なジェンダー規範は少子化の原因にもなっているとの見方がある。こうした風潮を変えようにも、政治の場に女性議員が少なく、特に衆院議員における女性比率は9.9%と低迷(※1)。日本の課題を解決するため、一体どこから何を変えていけばいいのか。3月4日に開催した「#ジェンダーの壁を乗り越えろ! 日経xwoman×読者の編集会議」では、参加者が分科会形式で、「夫婦別姓」「少子化」「政治」の各テーマについて、課題と解決策を話し合った。
戸籍上の名前でないと信用されない?
夫婦が希望すればそれぞれ結婚前の姓(氏)を名乗ることができる「選択的夫婦別姓(氏)制度」。日本では司法の判断や伝統的な家族観を重視する声に阻まれ、認められていない。結婚の際は夫婦どちらかの姓を選ぶことが定められており、実際は妻が夫の姓に変更するケースが95.3%(2020年時点、※2)。改姓による不便や不利益が女性に偏っているとの指摘がある。
「(選択的)夫婦別姓」について議論した分科会では、まず自分たちが実際に体験した不便や不利益の内容がシェアされた。旧姓で会社を経営しているという参加者は、起業したとき、戸籍名でないと会社を登記できないことに気づいた。社会保険の書類にも原則、戸籍名が使われる(※3)。「自分の名前(旧姓)で、世間から会社経営者として認められていても、国の制度上は認められていないと感じる」。一方、銀行は7割が旧姓での口座に対応しており(※4)、この参加者も数年前に旧姓の口座を持つことができたという。
旧姓を通称として仕事で使っている女性は少なくない。「だから問題ないのでは」という声もあるが「会社の担当部署が対応してくれるからできているだけ。どちらかの姓を選ぶという仕組み自体がおかしい」「さまざまな夫婦の形に対応できていない日本は、世界的に見て遅れている」などの指摘が相次いだ。

改姓による不便や不利益が、世の中になかなか理解されないのはなぜなのか。「自分たちの親世代は結婚したら姓を変えるのが当たり前だったので、何が問題なのかを理解できていない」「夫婦同姓の不便さを実感していない女性もいる。丁寧な説明が必要」と、理解の浸透を訴えた。
さらに、若者の投票率の低さも原因になっていると指摘。「政治が変わることが重要なので、まずは選挙に行く」「皆で集まり、国会議員への陳情などを通じて伝えていくことも有効」「少子化への危機感を共有し、多様な家族のあり方を認める社会に変えていくことが大事だ」などの意見が上がった。
■選挙に行って政治を動かす
■草の根レベルでの活動や、政治家への陳情も含め、個々人が声を上げていく
■少子化への危機感を共有し、多様な家族のあり方を認める社会に変えていく
この提言を聞いたほかのグループの参加者からは、「男性の名字になる=結婚の幸せの象徴みたいになっていて、夫婦同性を女性の人権問題だと捉えている人が少ないように思う」「結婚したときには考えるけれど、そこを乗り越えてしまうと忘れがち。声を上げていきたい」などと共感する声が寄せられた。
※2、内閣府男女共同参画局「夫婦の姓(名字・氏)に関するデータ」
※3、保険証やマイナンバーカードには戸籍名と旧姓の併記が可能
※4、内閣府男女共同参画局、金融庁監督局「旧姓による預金口座開設等に係るアンケート結果概要」(2022年9月)