理系の女性が学び・働く環境が未整備
製造業や建設業など、理系分野の職種が多い企業では特に、女性の採用に苦心している。採用対象となる女性の学生数自体が少なく、なかでも工学系の学生に占める女性比率は15%程度。「理系女性」についての分科会では、理系の女性の採用やキャリアアップをめぐり、課題と解決策を議論した。
まず参加者から寄せられたのが、理系の職種の女性にとって、学び働く環境が未整備だという声。地方大学で工学分野の教員として働く参加者からは、「工学系の学部の建物に女性用トイレが少ない」という報告があった。
「研究職の人からみれば大学も就職先の一つだが、特に地方大学の中には女性に対する理解が乏しいところがある。大学の教授陣は専門分野に詳しくても、ジェンダーに関心があるとは限らず、どうアプローチするのかが難しい。女性だけでなく、男性で育休を取りたいといった教員に対しても拒否感を示してしまう。女性の大学職員たちも諦めてしまって進まない」
理系の大学を卒業してもキャリアアップは望まない
環境面のほか、女性自身のキャリアリテラシーに課題を感じるという見方も。先ほどの、地方大学で働く参加者は、「首都圏と地方とで女性のキャリア意識に格差があり、特に地方大学の理系学部を出た女性の中にはキャリアアップを望んでいない女性もいる。大企業への推薦枠があるのに、『そんなに出世意欲もないし、結婚するまで働ければいい、大学院にも行かない』という人もいる」と語った。
薬学部出身の参加者からは、「町の薬局は働きやすく、薬剤師には女性が多いが、管理職や病院勤務となると女性が減る。昇進したくない女性も多く、幸せな働き方かもしれないが、どうやってモチベーションを上げるかが課題」との声が上がった。
理系の女性のキャリアアップに関する課題をどう克服すべきか。「女性の学生のキャリアリテラシーを高める工夫が必要。理系の女性は就職も有利だし、チャンスがあるし、企業に入ってからも実力勝負で活躍できるというロールモデルをもっと見せる」という声や、「必ずしも皆がキャリアアップを目指さなくてもいいが、上に行きたい人が行けるような環境づくりは必要」「クオータ制のように、理系職の女性の採用枠を積極的に増やしてもいいのでは。それが『外圧』となり、教育現場や親の意識も変わっていく」などの提案があった。
■特に地方大学の理系学部で、女性の学生のキャリアリテラシーを高める
■理系の女性は就職も有利で、活躍できるというロールモデルをもっと見せる
■企業の採用や人事に「女性枠」を設けて、意識変革のための「外圧」とする
この提言を受けて他のグループの参加者からも、「大学で理系の大学院生の活動支援をしていますが、『男性は理系、女性は文系』というジェンダーバイアスは、学生の中では薄れてきている。中学・高校の進路指導担当者や保護者など、大人の意識を変える必要がある」という指摘が上がった。