イノベーションの創出には女性をはじめ多様な人材の活躍が欠かせない。とりわけ理系分野の女性人材が不足しており、育成が課題だ。また多様性の観点から、育児中の男性の働きやすさの確保も急がれる。3月4日に開催した「#ジェンダーの壁を乗り越えろ!日経xwoman×読者の編集会議」では、参加者が分科会形式に分かれ、「女性採用数の増やし方」「理系女性」「男性育休」の各テーマについて、課題と解決策を話し合った。
女性の採用はネガティブなこと?
厚生労働省「雇用均等基本調査」(2021年度)によれば、男性を採用した企業の割合が79.9%に対し、女性を採用した企業の割合は63.2%で、男性よりも16.7ポイント低い。なぜ女性の採用数が増えないのか。
「女性採用数の増やし方」について話し合った分科会では、「女性が出産や育児で一度抜けてしまうことへのネガティブな反応がある」と指摘。採用面接時に「結婚や出産の予定がありますか?」と聞かれることへの違和感が報告された。
また、「管理職採用においては長時間労働ができないと不利になる場合もあるが、女性は子育てや介護の主な担い手になっていたり、40代ごろから女性特有の病気にかかったりすることもあり、長時間労働が難しい人もいる」など、拘束時間がネックになっているとの指摘もあった。
どうすれば女性の採用数を増やせるのか。グループで出た結論は「人材募集の条件をより柔軟にする」ことだ。
例えば、就業時間の拘束をできるだけ少なくすること。「定時ではなく、朝2時間、昼3時間、夜2時間など、コアタイムなしの自由な働き方が認められるといい。その日の働き方や業務を報告・共有する仕組みにすれば、お互いに『おつかれさま』と言い合える環境に近づくのではないか」

企業の採用ホームページやSNSでも「女性の採用比率や、管理職の月当たりの残業時間まで、グラフなどを用いてより具体的に情報公開していく。男性育休についても、何パーセントの社員がどのように取得しているかをリアルに紹介すると、働き方がより見えやすい」。なかでもSNSでの発信については、「読む側が気軽にコメントをつけられるため、外からの評価を意識できる。普段あまり採用者と接しない人のマインドも変えられるのでは」というメリットが提案された。
また、女性に限らず「応募者の経験を問わない」ことを提案。ある参加者が勤める企業では、学歴やバックグラウンドを問わず「会社のビジョンに共感できるか」だけを応募の基準にしたところ、応募者が7倍に増えたという。
「多様な人材確保のためには、採用する側のチームも多様性を確保することが大事。男性役員・部長以上だけでなく、現場の女性や外国人も面談に加わるのが望ましい」という意見も出された。
今は男性を採用した企業に比べて女性を採用した企業のほうが少ない状況だが、「今後男性育休が普及すれば、育児で仕事を離れることは当たり前となり、『女性採用はリスク』という考え方が減るのでは?」という前向きな声も上がった。
■勤務時間に柔軟性を持たせ、長時間労働をなくしていく
■女性や育児中の男性、管理職の働き方を、データなどを用いて具体的に示す
■学歴やバックグラウンドにこだわりすぎない
■採用側のメンバーの多様性も確保する