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読者2900人&キーパーソンと考える 今、必要な「少子化対策」

少子化対策「家庭内ジェンダー平等」必須/フィンランド

【6】北欧の女性リーダーに聞く/後編 ワンオペの解消に罪悪感を覚えなくていい。話し合いを続けることが大切

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北欧で子育てをしながらリーダー的ポジションで働く2人の女性に、子育てとキャリアへの向き合い方や、少子化対策についての意見を聞きました。後編の今回は、フィンランドで15歳から1歳までの4人の子を育てながら、昨年まで北欧最大の新聞の編集長を務め、現在はコンサルタントとして働くアヌ・ウバウドさんにインタビュー。日本政府も少子化対策の方針の一つとして掲げる「子育てとキャリアの両立」を、アヌさん自身はどうやって実践してきたのでしょうか。

アヌ・ウバウドさん
アヌ・ウバウドさん
フィンランド出身、40歳。ヘルシンギン・サノマット(北欧で最も発行部数の多い新聞)の編集長を昨年まで務め、2022年8月には企業のコミュニケーションブランティングなどを手掛けるスタートアップ企業、United Imaginations を設立。私生活では4人の子どもの母親

夫が妻を「助ける」のではなく、タスクや責任を「分け合う」

 昨年まで北欧最大の新聞の編集長を務め、15歳から1歳までの4人の子を育てるアヌ・ウバウドさん。最初の出産は24歳のとき、アヌさんが大学生の頃。「その後、新聞社と雇用契約を結んでキャリアをスタートさせた後に2番目の子を出産。管理職の頃に3番目の子を出産し、一番下の子を出産したのは39歳で編集長を務めていた頃です。4人の子どもの年齢は開いていますが、そのおかげで長期間連続して仕事を休まずにすみました」

 前編「男性が少子化改善の鍵 長時間労働改めて/アイスランド」で話を聞いたソーラさんと同様に、アヌさんも、出産後に責任ある仕事を続けることへの戸惑いや恐れは「一度も感じたことがない」と言い切る。「私の両親も働いていて、キャリアに情熱を持っていました。私も当然、両親の影響を受けました。私には姉と兄がいますが、男女で違う育てられ方をしたなんて思ったことはないですし、同じ教育機会を与えてもらいました」

 アヌさんの1日の労働時間は、編集長時代から「約10時間」。在宅勤務は週に1~2回で、週に3日ほどオフィスに出社する。「オフィスで約8時間働いた後、子どもたちを迎えに行き、そこからは家族と一緒の時間を過ごします。その後、夜に家で仕事を再開する日もあれば、子どもより早く朝5時ごろに起きて仕事をすることも。一晩中仕事をすることはせず、自分の睡眠時間の確保には注意を払っています」

 4人の子育てと多忙な仕事を両立するためのキーワードとしてアヌさんが挙げたのが、「夫婦間でよく話し合い、責任を分担すること」。夫が妻を「help」するのではなく、2人で子育てにまつわるタスクや責任を「divide」(分け合う)ことが重要だと話す。

 「フィンランドでよく議論されているように、私たち夫婦は、親としての責任を『分け合う』ことが大事だと信じています。夫はカメラマンで、週末に仕事が入ることもありますが、平日は比較的フレキシブルに予定を組むことができます。私たちは両方が料理をし、子どもたちを迎えに行き、習い事に連れて行きます。こうした分担を、日常的に行うことが大事だと思います」

 フィンランドでも出生率は低下しており(20年は1.37)、アヌさんのように4人の子を育てる家庭は多くないという。「出生率の低下はグローバルな課題であり、正確な理由は分かりません。フィンランドでは公教育は無料ですし、私が読んだ最新の分析には、お金が大きな問題ではないと書いてありました。むしろ、子どもを持つことが夫婦の時間や人生をあまりに大きく変えてしまうからであると」

 アヌさんは、「母親が何でもやるべきだ」という理想の家族像や母親像に対するプレッシャーが、子どもを持ちづらいことに影響しているのではないかと話す。家庭内でのジェンダー平等が、夫婦が仕事とキャリアを両立する上で大事な考え方だという。

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