子どもの人生を豊かなものにしてくれる「絵本」そして「児童書」の数々。日々読み聞かせをしながら親子で大切な時間を過ごしている人や、気づけば一人でページをめくり、自ら空想の旅に出るわが子の姿を温かく見守っている人もいることでしょう。そんな親子をつなぐ絵本や児童書の作家さんに登場してもらうリレー連載。大人からも子どもからも愛される人気絵本&児童書の創作の裏側や、作り手の思い、親子へのメッセージをお届けします。
本を読んでいて「これは私のことだ」と感じたことはありませんか。米国の詩人アリスン・マギーさんによる絵本『ちいさなあなたへ』は、多くの読者がそう感じる一冊です。なかがわちひろさんの翻訳で日本で発売されてから15年、母親を取り巻く状況が大きく変わっていく中でも支持され続けています。その秘密はどこにあるのでしょうか。アリスンさんとなかがわさんに、創作の背景や詩に込めた思い、子育て時代のことを聞きました。
眠っているわが子を見て、こみ上げてきた感情を詩に
日経xwoman DUAL編集部(以下、──) 『ちいさなあなたへ』はアリスンさん自身の経験から生まれた詩を基にした絵本だそうですね。
アリスン・マギーさん(以下、アリスン) 子どもが小さかった頃のある夜、子どもが部屋で寝ているのを見守っているときに生まれた詩です。穏やかにぐっすり眠っているわが子の顔を見ていたら、ある痛みのようなものを感じました。親であれば誰でも、子どもにいい人生を送ってほしいと願いますが、親自身は見守っていくことしかできません。
この子がこれから経験するであろうことが頭に浮かびました。すこやかに成長して、いつかこの家から出ていくときのことも想像しました。そんなふうに、子どもの人生について思ったことをキッチンで詩にしたためました。その詩はとてもひどい出来ばえだったのですが、最後の1行を書いたときに、ここには何かがあると感じたのです。何度も書き直しながら、どんな形にするのがいいのか試行錯誤した結果、「大人向けの絵本」というアイデアに至りました。これが『Someday』(『ちいさなあなたへ』の原題)の最初の形です。
