「脱・日本型雇用」や「職務内容や勤務地が明確に定義されている」という言葉で説明されることの多い「ジョブ型」雇用。 でも、何となくピンと来ない。そんな人に向けて、『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』(日経BP)の著者であり、雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんが分かりやすく解説します。「欧米型雇用制度が持つ4つの特徴」「すべての日本企業が欧米型を取り入れるべきか?」に加え、海老原さんが提案する、日本企業が実施すべき雇用制度改革案について説明します。

前編 海老原嗣生 人事制度は日本型と欧米型の折衷案が有効 ←今回はココ
後編 脱・日本型雇用の先進企業はどこ? 専門家が解説

欧米企業のJD、中身を見たことありますか?

 皆さん、「ジョブ型」と聞いて、どんな人事制度を思い浮かべますか? 職務内容を細かく明記したJD(ジョブディスクリプション、職務記述書)があって、そのJDを順守しながら働くというイメージでしょうか。

 しかし、実のところ、欧米を含め、そこまで細かいJDに基づく人事制度は、どこにも存在しないのです。

 えっ! と驚かれた方もいるかもしれませんね。

 実際、欧米企業のJDを見てみると、かなり抽象的な表現も目立ちます。例えば、ある会社のプロジェクトマネジャーのJDには、「毎日起こり得る現場での問題を解決する」とあります。また、別の会社の人事部のアシスタントクラスのJDには「他の人事や一般管理の仕事も任された場合、行う」という記述もあります。想像していた以上にぼんやりしていると思いませんか? 今、日本には社員のJD(のようなもの)を作成し、「よし、うちもジョブ型を取り入れたことだし、これで先進企業の仲間入りだ!」と思っている会社もあるかもしれませんが、 その認識は間違いです。JDを作るだけでは意味がありません。背景をこれからじっくり説明していきます。

 そもそも、ジョブ型という名称自体、日本企業が今、取り入れるべき人事制度には合っていないと私は思っています。ジョブ型というよりも、ポスト型と言ったほうが正しいのではないでしょうか。つまり、「Grade for post、Pay for post、Job for post、Person for post」、等級も給与も職務もすべてポストにひもづいている人事制度を指します。