「脱・日本型雇用」や「職務内容や勤務地が明確に定義されている」という言葉で説明されることの多い「ジョブ型」雇用。 でも、何となくピンと来ない。そんな人に向けて、『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』(日経BP)の著者であり、雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんに、前後編で分かりやすく解説してもらいました。後編の今回は、「職務主義的な雇用制度を取り入れ始めている企業事例」と「日本の雇用制度改革の流れ」について紹介します。

前編 海老原嗣生 人事制度は日本型と欧米型の折衷案が有効
後編 脱・日本型雇用の先進企業はどこ? 専門家が解説 ←今回はここ

富士通、パナソニック、サイボウズ、NTTの取り組み

 日本企業の中にも、職務主義的な雇用制度を全社で、あるいは部分的に取り入れ始めている企業があります。時代に先駆けて新しい取り組みに挑戦し、課題に直面し、その解決策を模索している……。そんな先進企業の事例からは大きなヒントを得られるでしょう。いくつか具体例を紹介します。

 私が注目している企業は、まず富士通です。富士通は、会社主導の異動も併存させながらも、公募制を実施しています。公募制とは、前回記事で触れた「Grade for post、Job for post、Person for post」そのものです。富士通では、国内グループの従業員が自分の意志で別の仕事にチャレンジできる、グループ内の職種転換も含めたポスティング制度(社内募集制度)を展開しています。2020年度にはこの公募制を大幅に拡大し、応募要件から入社年次を撤廃したため、新入社員でも応募できるようになりました。

 新入社員に対し「希望の職務に就ける」という会社は他にもありますが、多くの場合、決められるのは部門まで。しかし、富士通は部門だけでなく、ポストまで決めると言っています。これにはリスクもあります。なぜなら、あるポストに社員Aさんが手を挙げて異動が決まった場合、Aさんがもともと所属していた部署には空きポストが生じるからです。その穴を埋めるために新たな公募をする必要が生じ、この公募ループが永遠に続くことになります。富士通の場合は、公募によって生じた空きポストに対しては、別の社員を配置することにしています。