2022年9月、政府は日本企業に対して、職務に基づいた給与体系、いわゆる「ジョブ型」雇用制度への移行を促進すると発表。ジョブ型の導入は、ビジネスパーソン、特に女性の働き方にどんな影響を及ぼすのでしょうか。給料、キャリアアップ、育児や介護との両立、労働時間、転勤など、気になる5つの点について、法政大学キャリアデザイン学部教授の松浦民恵さんに聞きました。
前編 「ジョブ型で専門性高まる」「女性にチャンス」は幻想か ←今回はココ
後編 「何歳からでも手を挙げ挑戦できる」のがジョブ型の利点
社内公募と中途採用が基本
脱・日本型雇用ともいわれ、新卒一括採用や年功序列制度の廃止とも関連する「ジョブ型」雇用。欧米で主流の雇用形態ですが、「日本においては、『ジョブ型』という言葉の定義が曖昧です」と、法政大学キャリアデザイン学部教授の松浦民恵さんは指摘します。
「日本では2020年に経団連が『メンバーシップ型のメリットを生かしながら、適切な形でジョブ型を組み合わせた『自社型』雇用システムの確立が求められる』との提言を出したこともあって、企業ごとにさまざまな形態の『ジョブ型』が誕生しています。これにより、ジョブ型の本来の姿が分かりにくくなってしまいました」
松浦さんによれば、欧米で主流の本来のジョブ型では、特定の職務(ジョブ)について、主に社内公募や中途採用によって、職務を遂行できる人材を確保しているといいます。採用は新規ポストの求人や欠員補充が基本で、新卒「一括」採用はなし。勤続年数が長いほど給料が上がる年功序列制度もなく、給料は年齢を問わず職務内容に従って決められています。
もしも年功序列制度が廃止されれば、「成果を出していないのに、勤続年数が長いだけで高い給料をもらっている人がいる」という不満からは解放される可能性があります。一方で、女性の給料アップは期待できるのでしょうか。さらに、社内公募や中途採用がメインになる場合、キャリアップの方法は、どう変わるのでしょうか。
ここからは、「ジョブ型とは何か」を再確認しながら、ジョブ型が女性の働き方に及ぼす影響について、給料、キャリアアップ、育児や介護との両立……などの5つのポイント別に、松浦さんに聞いていきます。
5つのギモン
【今回の記事で紹介する内容】
1.【給料】…年功序列制度の廃止で、「働かないおじさん」の給与が下がる?「男女間の賃金の不平等」も解消される?
2.【キャリアアップ】…新しいポストに手を挙げよ! でも自信がない人はどうすればいい?
【後編の記事で紹介する内容】
3.【育児や介護との両立】…長期の休みで、求められるジョブを遂行できなかったら、ポストを外されてしまう?
4.【労働時間】…余計な仕事が降ってこなくなり、残業時間が減るってホント?
5.【転勤】…勤務地が明記されるから「いきなり転勤」のリスクはない?