各社が自社に合った人事制度を模索する中、先行してジョブ型を本格導入する企業が増えています。富士通もその1社です。9月1日には、ポスティング制度(社内募集制度)で新卒入社2年目の社員が課長級ポストに就任しました。同社に取材し、ジョブ型導入の背景と現場の声を聞きました。

 富士通では2020年4月に国内のグループ会社を含む管理職、約1万5000人の社員を対象にジョブ型の人事制度を導入し、2022年4月に対象をすべての職層に拡大しました。ポスティング制度(社内募集制度)は以前から実施しており、現在では一般社員も管理職も含め、グループ内の人事異動の7~8割がポスティング制度経由で実施されています。ポスティング制度は2種類あり、期初である4月1日付けの異動に合わせた「一斉募集」(新任管理職登用)と、人材が必要になったときに随時行う「随時募集」があります。

 同様に管理職の登用も手挙げ方式が採用されています。「従来は上司が昇進候補社員を推薦し、昇格資料を作成し、最後に役員面接をして、最終審査でほぼ合格するという儀式的なスタイルでしたが、やる気のある人たちに手を挙げてミッションを担ってほしいという強い思いがあって切り替えました」(CHRO室・室長・森川学さん)

「応募されたが合格者がいなかったポストは空位にするか、キャリア採用で補填するか、組織設計を変更して対応します。妥協して合格させることはありません」(森川さん)。合格した管理職のうち、女性比率約15%、35歳以下16%
「応募されたが合格者がいなかったポストは空位にするか、キャリア採用で補填するか、組織設計を変更して対応します。妥協して合格させることはありません」(森川さん)。合格した管理職のうち、女性比率約15%、35歳以下16%

 随時募集で全社員向けに公募された「デザインセンター デザインアドボケート」(任期は基本1年間、課長級の専門職、プロジェクトリーダーとして、複数のチームメンバーをけん引)という新しいポストに、9月1日付けで入社2年目の横田奈々さん(23歳)が就任しました。同社の歴史の中で、課長ポストに就いたケースとしては最も若手です。

 このポストの仕事内容は、生活者の悩みに共感し、一緒に課題を解決していくこと。そのために社会との対話力や共感力、コミュニケーション力を持った人材が求められます。

 デザインセンター・センター長の宇田哲也さんは言います。「今までの富士通の課題解決手法は、企業目線で商品やサービスをPRしたり販売したりすることが中心で、私たちはその手法が課題だと捉えていました。そこでデザインセンターが先行して生活者視点に立ったコミュニケーションを実践し、有効性を確認できた暁には、この手法を社内はもちろんのこと、日本社会に対しても『皆さんもこの方法を採用してみませんか』と提案していきたいと考えました」

9月1日にデザインセンター・デザインアドボケートに就任した新卒入社2年目の横田さん
9月1日にデザインセンター・デザインアドボケートに就任した新卒入社2年目の横田さん