働き方の多様化が進む中、リーダーには、進捗管理や部下のやる気の引き出し方で従来とは違った工夫が求められています。日本睡眠学会専門医の中村真樹さんは「睡眠不足が仕事のパフォーマンス低下につながっていることを、ビジネスパーソンはもっと認識したほうがいいのでは」と話します。連載2回目では睡眠不足がもたらす仕事やチームへの悪影響について解説。仕事のパフォーマンスを向上させる「眠活法」も紹介します。
「ショートスリーパー」の正体は?
連載1回目でも紹介した通り、厚生労働省が2022年1月に公表した『21年度 健康実態調査結果の報告』で、7時間未満の睡眠時間の人が全体の67.7%と、日本人が全体的に睡眠不足の状態であると言えます。
中には「睡眠時間が短くても熟睡しているから大丈夫」「自分はショートスリーパーだから」という人もいるかもしれません。しかし、本当に大丈夫なのでしょうか。実際に睡眠時間が足りているかどうかをチェックするには、自宅でできる簡単な方法がある、と中村さんは言います。
「それは休日前夜にカーテンを閉め切り、目覚まし時計をかけずに寝てみるんです。その状態で就寝しても、普段の日と同じ時間に自然にスッキリ目が覚めれば、その睡眠時間で足りていると言えます。反対にいつもより遅い時間に目が覚めた、あるいは同じ時間に目が覚めても2度寝した場合は、明らかに寝不足です。平日のその睡眠時間では不十分で、寝不足の影響、つまり『睡眠負債』が蓄積しているということです。
実は『5時間も眠れば十分』といったショートスリーパーはごく稀で、遺伝・体質的とされ、2019年にショートスリーパーに関わる遺伝子変異が見つかりましたが、これは10万人に4人程度なのだそうです(※1)。本物のショートスリーパーであれば、睡眠時間が短くても体のメンテナンス、疲労回復ができるので、『平日の睡眠時間は短いが、休日に寝だめしている』『短い昼寝をすれば大丈夫』『目覚まし時計がないと起きられない』という人は、ショートスリーパーとは言えないんです。
以前、あるテレビ番組で『自分はショートスリーパーだ』と豪語するタレントが、番組の企画で遮光カーテンを閉め、スタッフが密かに目覚まし時計をオフにした状態で寝たところ、10時間以上も眠ってしまった……というVTRがありました。思い込んでいるだけで、実のところショートスリーパーではない、という人のほうが圧倒的に多いと思います」
(※1)A Rare Mutation of β1-Adrenergic Receptor Affects Sleep/Wake Behaviors. Neuron. 2019 Sep 25;103:1044-1055.