女性活躍推進法が施行されて早や6年が経過しました。第一線で女性活躍を進める先進企業の事例もある一方、「実はうちの職場は何も変わっていない」という職場は多く存在しています。そんな職場に根深く残る「いまさら」な発言に対し、冷静かつ論理的に、改革の大切さや必要性を説明するときに使える台本(スクリプト)を用意する特集です。ぜひ目を通し、ここぞ、というときに使ってください。今回は「なぜ男性育休は必要なのか?」という職場の人や家族の発言に、どう対応したらいいか、結婚や出産、子育てなどについて経済学的手法で研究している東京大学大学院経済学研究科教授の山口慎太郎さんに聞きました。
自分が「未来のために道を切り開いている」という誇りを持って
2022年10月に「産後パパ育休」と呼ばれる男性向けの出生時育児休業制度が創設され、男性の育児を推進する動きが広がりつつあります。とはいえ、厚生労働省の「21年度雇用均等基本調査」によると、男性の育休取得率は13.97%で、前年の12.65%と比べて1.32ポイント上昇したものの、依然として低いのが実情です。その背景の1つに、まだ男性育休への理解が職場で得られないことがあるでしょう。
例えば、上司に育休を取りたいと相談すると「え、取るの……?」と言われてしまい、「育休を取りたいのに理解してもらえないのはつらい。やはり男性が育休を取ってはいけないのかな」などと悩んでいる人は少なくないかもしれません。
「まずこれから男性育休を取ろうと思っている人たちには、自分たちが未来のために道を切り開いているんだという誇りを持ってほしい。その上で交渉の最終ゴールは何かを考えるといいのではないでしょうか」と話すのは東京大学大学院経済学研究科教授の山口慎太郎さんです。相手を責めたり、鼻につく言い方をしたりせずに、自分の意見を主張していくことが大事とのこと。誰に対して意見を主張するのかによって、話の持って行き方は異なると言います。
「相手が合理的に考える人ならば、データを用いながら話したほうがいいし、人情話が好きな人であれば心に響くように話をしたほうがいい。人によって話し方を変えたほうが伝わりやすいので、相手のタイプを見極めてから話してみるといいでしょう」。
次ページからはシチュエーション別に、どんな切り口で説明すべきかを山口さんに教えてもらいました。
【2】「え、育休取るの……? 正直、抜けられると困るんだよなぁ」という上司に
【3】「私が手伝うから育休は取らなくてもいいんじゃない?」という実母に
⇒⇒⇒ 何を、どう伝える? 次ページから解説します。
