1. TOP
  2. いまさら? 女性活躍推進への無理解と挑戦のリアル
  3. 性差別的発言、自分と違うジェンダー観…専門家どう対応
いまさら? 女性活躍推進への無理解と挑戦のリアル

性差別的発言、自分と違うジェンダー観…専門家どう対応

【6】ジェンダー研究者 池田恵子・田中俊之(後編)「今日のごはん、何にする?」という会話くらい気軽にジェンダーを話し合える社会にするには

Terraceで話題!

「女性活躍」の重要性が注目されるようになった今でも、日本の社会には男性中心の組織や考え方が根深く残っています。男性社会の中で生きづらさを感じてきた人や、性別役割分業を受け入れて生きてきた人など、さまざまな価値観が共存する中、ジェンダー領域の研究者たちは、価値観のズレから生まれるコミュニケーションギャップにどう対処しているのでしょう。前編に引き続き、静岡大学教育学部教授で同大学副学長の池田恵子さん、大妻女子大学人間関係学部准教授の田中俊之さんのそれぞれに聞いていきます。質問へのお二人からの回答を編集部で項目別に構成して、お届けします。

前編 ジェンダー平等の必要性が伝わらない 無理解への対処法
後編 性差別的発言、自分と違うジェンダー観…専門家どう対応 ←今回はココ

「災害時の性暴力は男の本能」の発言に言葉を失った

【4】突然、性差別的な発言を投げかけられ、ショックで言葉を失った
池田さんの対処法
「自分の言葉の影響力を自覚してください」と発言に伴うマイナスの影響を本人に気づかせる。実体験をケーススタディーとして研修に活用することで、再発防止につなげる

編集部(以下、略) 自分とは違うジェンダー観を持つ人と接するときに、気をつけていることはありますか?

池田恵子さん(以下、池田) 中には、びっくりするようなことを平気で口にする人もいます。ある著名な男性の防災専門家と災害時の性暴力の話をしていたときに、突然「男性は災害時のような危機が迫ると、子孫を残そうという本能が働いてどうしようもないんだ」と言われたことがありました。情けないことに、私は面食らって「そうですか」としか言えなかったんです。ただ、あまりにおかしいと思ったので、間違った考え方を「仕方がない」で終わらせないように、その経験を災害時の暴力防止研修で紹介し、学びの材料にしています。

 防災関係者に話をするときは、「災害時に性暴力が起こるのは仕方がないという意見もありますが、皆さんどうお考えになりますか?」という問いを投げかけ、自分事に置き替えて考えてもらいます。「災害時、地域の方の間では、皆さんは防災の専門家という特別な存在として認識されます。地域で何が起きようと仕方がないとなったら、どんな混乱状態になるか。皆さんの地区で誰もが安心・安全に過ごしたいはずです。皆さんの言葉の影響力を自覚していただきたい」と伝えていますね。

 先述のように、自主防災組織の役員は男性が大多数です。「1つ上の存在の専門家が言っているから」などと相手を立てるように私が言っていると、いつまでも男性中心の状況は変わらない。男性の防災関係者には、ジェンダーに関して伝えるべきことをしっかり伝えます。でも、心にシャッターを下ろされたらどうしようもありません。女性の困難を改善する活動を一緒にしてくれる仲間になってもらう必要があるんですよね。男性たちも実際に苦労していろいろな活動をしていることは確かなので、そこは敬意を払って接するようにしています。

田中俊之さん(以下、田中) 僕の場合、例えば講演が開催される地域性や参加者の傾向によって話の構造を多少変えています。例えば、年配の男性が多い集まりでは、働くことしかしてこなかった人生を宝物のように思っている参加者も結構います。「昭和時代の日本の経済成長を支えてきたのは皆さんの頑張りによるところが大きい。でも、男性優位社会は男性にとっても不幸なんですよ」と、参加者の皆さんがこれまで歩んできた人生を否定されたと受け取らないような伝え方をしています。

 ただ、なぜそういうことができたのかということは考えてもらわないといけません。その人たちが仕事にまい進できた裏には専業主婦の存在があり、女性は自身のキャリアや経済的自立を犠牲にしてきたわけです。そうした昭和の成功モデルの弊害は、厳しくても言うしかないですね。

<前編の内容>
【1】「今、それどころじゃない」「ジェンダー平等の話は後にして」と言われた
【2】「自分に直接関係がない」と自分事として考えてもらえない
【3】多様性の視点からジェンダー平等の必要性を伝えたら反発された

<後編の内容>
【4】突然、性差別的な発言を投げかけられ、ショックで言葉を失った
【5】身近な環境にジェンダーギャップはほぼないが、時々会う知人や親戚は性別役割分業意識が強く、気まずさを感じることがある
【6】家庭内でジェンダー関連の話をすると、子どもが嫌がる

 ⇒⇒⇒ ジェンダーの専門家はどう対処している? 後編では【4】~【6】への対処法を考えます

関連雑誌・書籍・セミナー

会員登録でクリップやタグの
フォローが可能になります
フォローしているキーワード/タグ
キャンセル
2カ月無料!春割キャンペーン実施中 

2カ月無料!春割キャンペーン実施中 

日経xwomanと日経電子版を2カ月間無料で体験いただけます。