包摂と多様性を意味する「インクルージョン&ダイバーシティ(I&D)」。先進企業でダイバーシティ推進を担当する社員に、「なかなか女性活躍が進まない企業や組織で働く人たちへのアドバイス」を聞きました。教えてくれたのは、KPMGコンサルティングのインクルージョン、ダイバーシティ&エクイティ(IDE)推進室・ディレクターの新谷英子さんと、PwC Japanグループ・ダイバーシティリーダーの梅木典子さん。コンサルティング企業では、特に「人」が資本。性別によらず、すべての社員に実力を発揮してもらうため、I&D推進は経営戦略の一つだというメッセージを、担当者はどんな言葉を用いてどのように社員や経営層に伝え、理解を促しているのでしょうか。(※「D&I=ダイバーシティ&インクルージョン」という語順を使う場合もありますが、今回紹介する2社は「まず包摂が大事」という考え方に基づき、I&Dという言葉を使っています。)
「変われる人から一緒に変えていきましょう」
2014年設立のKPMGコンサルティング(以下、KPMG)は、次々に中途採用で新しい社員が加わり、現在の社員数は約1300人に増えています。多様な社員を包摂することを会社の重要項目の一つとし、19年3月にインクルージョン&ダイバーシティ推進室(現在のIDE推進室)を設置。新谷さんは別の会社でダイバーシティ委員会・委員長(部長)などを務めた後、19年9月、KPMGに入社し、IDE推進ディレクターに就任しました。新谷さんはどのような言葉で、I&Dの社内浸透を図ってきたのでしょうか。
「ダイバーシティの重要性の理解を広めることは『カルチャー変革』です。組織の中で対話を繰り返し、さまざまな施策を打ちながら丁寧に進めることが大事です。いきなり全社員に『変わってください』というのではなく、まずは『変われる人から一緒に変えていきましょう』というスタンスでメッセージを発信してきました」
いまやダイバーシティ推進の面で第一線を走る企業の1社である同社。しかし、当初はダイバーシティ推進に関して聞く耳を持たない人もいたのではないでしょうか。
社内で「包摂と多様性」を推進するために
・「トップダウン」で効果的に伝えるにはどうすれば?
社長・経営層 → その組織で働く人へ
推進者 → 必ずしも完全には賛成や納得をしていない人へ
・「ボトムアップ」で効果的に伝えるにはどうすれば?
社内ネットワークをつくり、横のつながりで声を集め、経営に提言
同業で女性活躍を推進する、好業績企業の事例を共有する
経営者の目線で考え、意見を話す……など
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