2022年10月から施行された「産後パパ育休(出生時育児休業)」。21年ユニセフ(国連児童基金)が発表した報告書によると、日本は父親のための「育休制度充実度」が先進国の中で1位。男性に認められている育休期間が世界で最も長いことが評価される一方で、取得率の低い実態が指摘されています。産後パパ育休が日本の社会で実態として定着するために必要なこととは? この連載では、スウェーデンを中心に性別役割分業観についての日欧比較研究に携わる大阪大学大学院人文学研究科教授 高橋美恵子さんが、主に西欧諸国の海外事例と比較しながら、日本の現状と課題、対策について全3回で解説します。

(1)男性育休の日欧比較 「取得率」だけでは測れない ←今回はココ
(2)父親育休の普及 かつて男女格差あった北欧も模索した
(3)今も残る性別役割分業型社会が男性育休普及を阻んでいる

日本の男性育休充実度は「世界トップ」でも、現実と大きな落差

 「産後パパ育休」は、夫が妻の産休期間に合わせて、子どもの誕生から8週の間に最大4週分の休みを、2回までに分けて取得できる制度です。この制度の導入以前から日本の男性育休充実度は、すでに“先進国トップ”と聞いて、驚く人がいるかもしれません。しかし、国際的に見て日本の育休制度はとても充実しています。

 日本が、育児休業法(現在の育児・介護休業法)を施行したのは1992年。これは諸外国よりも早く、育児休業法の開始当初から母親だけでなく父親の育休も認められていました。期間は原則1年間(最大1年6カ月までの延長可)でトップクラスの長さ。男女ともに同等の割合で育児休業給付金が支給されます。

 ユニセフが2019年に公表した調査では、男性が給付金を受給できる育児休業期間の中で、「給与満額支給相当の換算期間」が最も長いのは日本であるとの結果が出ています。

(注)「雇用保険の満額支給換算期間」とは、休暇週数に各国の平均所得を想定した父親の支給率を掛けたもの。例えば、ある父親が10週間の休暇を取得する権利を有し、父親が通常の給与の50%で10週間の休暇を取得できる場合、満額支給換算期間の休暇は5週間(10週間×0.5)となる
(注)「雇用保険の満額支給換算期間」とは、休暇週数に各国の平均所得を想定した父親の支給率を掛けたもの。例えば、ある父親が10週間の休暇を取得する権利を有し、父親が通常の給与の50%で10週間の休暇を取得できる場合、満額支給換算期間の休暇は5週間(10週間×0.5)となる

 2010年には、夫婦が共に育児休業を取得することで、1歳までの育休期間を1歳2カ月まで延長できる制度「パパ・ママ育休プラス」がつくられます。法改正により、22年10月から夫婦共に育休を2回まで分割取得することが可能に。「パパ・ママ育休プラス」と同時に始まった「パパ休暇」(母親が出産した後から8週間以内に父親が育休を取得すれば、1歳までに再度育休を取得できる制度)は、22年10月から「産後パパ育休」に変更となったことで、父親は合わせて最大4回まで分割取得が可能、より柔軟に育休制度の活用ができるようになりました。

 政府は「25年までに男性育休30%」を目標に掲げていますが、22年7月に厚生労働省が発表した「雇用均等基本調査」では、21年度の取得率は13.97% 。近年かなり伸びてきたとはいえ、母親の85.1%と比べると、父親の育休取得率は依然として低い状態です。

 厚生労働省が行う「イクメンプロジェクト」では、男性の育児休業の目的を「積極的に子育てをしたいという男性の希望の実現」「女性の継続就業率と出生率の向上」「企業全体の働き方改革へのつながり」としています。今回の法改正は、政府の本気の姿勢と“変化のきっかけ”としては期待が持てますが、本来の目的に合った制度の活用をすることができ、実際に社会に定着するかどうかは、注意深く見ていく必要があります。