1974年、世界で初めて両親を対象にした「両親休暇制度」を導入したスウェーデン。現在、男性の育休取得率は9割に近く、柔軟な働き方と家族の多様性に対応するワーク・ライフ・バランスを積極的に推し進めています。しかし、60年代まではスウェーデンも「男性は仕事、女性は家庭」という性別役割分業社会だったと、大阪大学大学院人文学研究科教授 高橋美恵子さんは指摘します。女性の就労と男性の育児促進に向けた長年の取り組みにより、現在では男女平等の先進国として知られるスウェーデン。男女共仕事と子育てを両立させる同国の変革の歴史から、日本社会で男性育休を定着させるヒントを探ります。
(1)男性育休の日欧比較 「取得率」だけでは測れない
(2)父親育休の普及 男女格差あったスウェーデンも模索した ←今回はココ
(3)今も残る性別役割分業型社会が男性育休普及を阻んでいる
法改正を重ねて、スウェーデンはジェンダー平等と福祉の先進国に
スウェーデンは、EU諸国の中でもライフステージを通じて就業率の男女差が最も少ない国の1つ。男女共、就労を通じて経済的に自立することが社会規範とされており、「Dual Earner, Dual Carer」の観点から、仕事も家事・育児も夫婦で分け合うものとして男性の育児参加が進んでいます。
スウェーデン社会保険庁の統計データを基に、育児休業全取得日数に占める男性のシェア率の推移をみると、1974年の「両親休暇制度」の導入当時は0.5%でしたが、2021年には29.6%となっています。
“福祉大国”として知られる現在のスウェーデンの社会保障制度は、長い時間をかけて構築されたもの。政府は女性の社会進出の後押しや少子化対策を模索する中で、育児に関する男性の両親休暇取得を妨げる要因、育児を体験したことによる効果などに視点を置き、実態に即した法改正を重ねています。その背景には、経済構造の変化があります。