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グローバルに見る 日本の男性育休

今も残る性別役割分業型社会が男性育休普及を阻んでいる

(3)性別や就業形態にかかわらず、働く人が自分の社会的権利を行使できる土壌づくりが必要

Terraceで話題!

「制度の充実度は世界トップ」でも、なぜ日本の男性育休制度は利用しづらいのか? 前回は、景気後退や深刻な少子化問題を機に、男性の育児を後押ししてきたスウェーデンの歴史について解説しました。スウェーデンでは、共働き型社会に大きく舵(かじ)を切るために、政府が育児休業制度や両立支援策を段階的に整えています。最終回では男性育休の定着に向けて必要なアクションを大阪大学大学院人文学研究科教授 高橋美恵子さんと考えます。

(1)男性育休の日欧比較 「取得率」だけでは測れない
(2)父親育休の普及 男女格差あったスウェーデンも模索した
(3)今も残る性別役割分業型社会が男性育休普及を阻んでいる ←今回はココ

 2022年7月に厚生労働省が発表した「雇用均等基本調査」では、21年度の男性育休取得率は13.97% 。記事「男性育休の日欧比較 『取得率』だけでは測れない」で紹介したように、22年10月から「産後パパ育休(出生時育児休業)」が始まり、育休制度の活用がより柔軟にできるようになりました。男性の育休取得率は9年連続で増えているものの、21年度における男性の育児休業取得期間は「5日~2週間未満」が26.5%(18年度35.1%)と最も高く、続いて「5日未満」が25.0%(同36.3%)、「1カ月~3カ月未満」が24.5%(同11.9%)となっており、2週間未満が5割超。妻の就業継続を十分サポートし、積極的に子育てしたい父親の希望を実現できるほどの期間は取得できていない状況があります。

 グローバル化や共働き化が広がる中で、日本のダイバーシティ推進は過渡期にあります。男性育休取得率を上げることがゴールではなく、男性育休本来の目的である「積極的に子育てをしたいという男性の希望の実現」「女性の継続就業率と出生率の向上」「企業全体の働き方改革へのつながり」を実現するには、どのようなことが必要なのでしょうか。

6割超の女性は「柔軟な働き方」ができれば仕事を続けたい

 内閣府が20年に実施した「少子化社会に関する国際意識調査 」によると、20~49歳の女性のうち、日本では、61.2%の人が「子どもの成長に応じて働き方を変える」のが理想の働き方と答えており(同、男性回答は41.4%で、男女計平均51.8%)、ライフステージにかかわらず働き続けたいと考える人が大半。「子どもを持ったら退職し、育児に専念する」「子どもの有無に関係なく、結婚後は働かない」ことを理想と考える人は、調査対象国すべてで1割に満たない結果となっています。

 第1回の記事で紹介した、男性側の「子育てに当たって利用したい/したかったと思う制度(希望)と実際に利用した制度(現実)」をみると、日本の男性は「理想」と「現実」のギャップが総じて大きいのが特徴でした。

 女性がライフステージにかかわらず仕事を続けることを希望し、育児休業制度を利用したい男性がいても、従来の性別役割分業型社会からの転換ができていないことが壁となり、子育て世代の仕事と子育て生活のバランス(ワーク・ファミリー・バランス)を巡る男女間のギャップや理想と現実のギャップ、さらに政策と実践のギャップを生み出しています。

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