人生後半に差しかかると、誰しも潮目が変わるような「相転移(そうてんい)」の時期が訪れます。後半人生を「どう生きるか」。自分らしく生きるための戦略を考えるとき、図解によって物事を抽象化する思考ツールが役立ちます。自身も50歳を境にコンサルティング業界の第一線から大学教授へと転身を図ったという筑波大学大学院ビジネスサイエンス系教授の平井孝志さんに、自分を可視化して客観的な自分と対話を促すために必要な思考法を聞きます。

(1)「前半の延長」ではない 後半生を自分らしく生きるには ←今回はココ
(2)自分のパーソナルアンカーを見つけ中期計画を立てる
(3)人生は決断の連続 トレードオン思考で考える

人生で避けて通れない「相転移」とは?

 「相転移(そうてんい)」とは、水蒸気が水に、水が氷になるように、状態(相)ががらりと変わること。転じて、人生には避けては通れない相転移が存在すると私は思います。人生の前半と後半は明らかに「相(フェーズ)」が異なるのです。40代、50代を迎え、「これからどう生きていこうか」と考え始めたとき、限られた後半人生の時間を自分らしく生きるために必要なことは何かを一緒に考えていきたいと思います。

 人生前半、私たちは、挑戦、成長、生活基盤と責任範囲と自己実現の拡大を目指して生きてきました。それによって得たもの、ものの見方、考え方、関係性、「こうあるべき」という信念は、成長の原動力にもなり、判断基準にもなってきました。

 それが、40代、50代ともなってくると、それまで信じてきた指針や判断基準が、どうも今の自分に合わないと感じ、肉体の衰えからは無意識に避けようのない死を連想します。でも、これまでの基準を壊して今の自分に合ったものにつくり直すことには戸惑いがあります。

宇宙にも人生にも「無限大」は存在しない。人生にはどこかで潮目が変わる「相転移」がある
宇宙にも人生にも「無限大」は存在しない。人生にはどこかで潮目が変わる「相転移」がある

 私自身、40代後半で相転移に直面しました。それに関して多くの本を読み、考えて、完全に超えられたのかは分かりませんが、今ここにいるわけです。人生の前半が、広げていく、チャレンジする、可能性を探るといったイメージなら、後半は自分に対して素直になり「生き切る」ことについて考える方向に転換する。それが人生の充実につながっていくのではないか、と考えています。

「未来は現在の延長線上にはないのです」と話す筑波大学大学院ビジネスサイエンス系教授の平井孝志さん
「未来は現在の延長線上にはないのです」と話す筑波大学大学院ビジネスサイエンス系教授の平井孝志さん

 人生の相転移は誰にでも訪れますが、個人差があり、皆さんのように真面目に働き、真剣に生きようとしている人であればあるほど、実は大変です。キャリアを築きたい、充実した人生を送りたいと考えている人ほど罠(わな)にはまって、がんじがらめになりがちなのです。

 相転移に対応していくには、まず「いいタイミングだ」とプラスに捉え直すことです。自分自身をもう一度見つめて、自分をもう一度好きになるプロセスが必須となります。人生前半の生き方の中で、後回しにしなければならなかったさまざまなことにも、気づくことです。

 方法としては、「自分はもともとどんな人で、何が好きか?」を、問うてみることから始めましょう。