近年、オンラインでの海外留学や海外派遣制度を充実させる高校、留学団体が増えるなど、高校生にとって「留学」が身近な存在になりつつあります。日本の教育にとどまることなく、不確実な時代を生き抜くスキルを身に付けるための手段として、将来的に留学を選択肢の一つに考える人も多いのではないでしょうか。しかし、親の手が何かと必要な高校時代での長期留学は、さすがにわが子には早すぎるのではとちゅうちょする人も少なくないかもしれません。そこで今回は、約70年間高校生の交換留学のサポートを行ってきたAFS日本協会の石野理絵さんに、留学の種類や、高校時代に留学する意義、検討する前に知っておきたいことなどについて聞きました。
【年齢別記事 中学生~大学生のママ・パパ向け】
(1) 早期化する長期留学 高校時代にこそ行く価値がある ←今回はココ
(2) 進路選択を先延ばしするわが子 大学受験は大丈夫?
(3) 日比谷高校元校長 親の期待がプラスに働く伝え方は
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留年をマイナスに捉える声はゼロ
先行きが見えない激動の時代を生き抜く力を、どのようにわが子に身に付けさせるか。これは多くの親にとって頭を悩ませる課題の1つかもしれません。現在学びが多様化し、教育の選択肢が増えている中で、「留学」はその生き抜く力を習得する1つの手段だといえそうです。
「留学は大学に入ってからするもの」といったイメージがあるかもしれません。しかし、文部科学省が2020年度までに高校での留学生を3万人から6万人に増やす目標を掲げたり、留学制度のある、あるいは留学を積極的にあっせんする私立や公立の高校が増えたりと、高校時代での、数カ月から1年間などに及ぶ長期留学にも注目が集まりつつあります。
高校生を対象にした留学には、大きく分けて2種類あります。1つは「交換留学」。これは異文化相互理解を目的とした1年間(実質10カ月)の留学で、日本の学校に籍を置いたまま行くことができます。留学生を受け入れると、受け入れ側も異文化体験をすることになるため、学費は免除、滞在先も無償で提供してくれる場合が多く、留学費用が抑えられ、金額的なハードルは低いといえるでしょう。
これに対して「私費留学」は、費用を全額自己負担する留学なので、金額的なハードルが高くなりがちです。したがって、長期留学に興味があり、留学を通じて海外の生活を体験したい、将来の目標をみつけたいという希望を持つ家庭は交換留学から検討してみるといいかもしれません。通っている学校に留学の制度がなくても、留学団体のサポートを受けて高校時代に留学に参加することは可能です。
とはいえ、まだまだ親のサポートが必要な高校生が親元を離れて異国で長期間生活するのは、親からすると心配が尽きないはず。そもそも、高校生で長期留学する意味はあるのか、と疑問に思う人も少なくないかもしれません。
「高校生は、自分が育った国や文化を背景に新たなことを学んで吸収し、自らを柔軟に変化させていくことができる年代です。多感な時期だからこそ、高校時代に長期留学する意義があります」。そう話すのは、主に高校生を対象に異文化学習の機会を約70年間提供する教育団体AFS日本協会で広報を務める石野理絵さんです。
「AFSで1年間の交換留学プログラムに参加した生徒たちに共通しているのは『多様な人が共存する世界の一員であるという自覚を持つようになった』ということ。16~18年に交換留学を開始した266人のうちの8割が『進学を含め将来の選択肢が広がった』と回答するなど、留学がその後の人生に大きなインパクトを与えているように感じます。早い段階でいろいろな気づきを得られ、今後を考える余地があることが大学入学後の留学との違いかもしれません」
帰国後、大学入試に臨む際なども留学経験はアドバンテージになります。さらに、AFSが実施したアンケート調査で、高校時代に交換留学をした人のその後のキャリアを追跡したところ、40歳以下で管理職などに昇進している人の割合が高く、留学が社会人になってからのキャリアアップにもつながる傾向があるようです。人生の価値観を育む時期である高校生にこそおすすめしたい交換留学について詳しく聞いていきましょう。
・高校で留学することは大学入試でもアドバンテージに。9割は進学先に現役合格
・40歳以下で役職に就く人が多い? 高校での留学が将来のキャリアアップにも好影響
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・サポート体制がしっかりしている留学団体を見極めるコツとは