保育園や小学校の頃は、スポーツ選手、お医者さんなどと夢を語ってくれた子どもたち。中学、高校と成長するにつれて「興味のあることが見つからない」「大学でどんなことを勉強したいか分からない」と話す子が少なくないようです。やりたいことが見つからず、進路選択に悩む中高生の子に対して、親はどんな手助けができるのでしょうか。都立日比谷高校校長時代に東大合格者数をV字回復させ、現在は白梅学園高校校長として活躍し、多くの高校生の進路相談に乗ってきた武内彰さんに、大学受験が迫ってもやりたいことが見つからない子に対しての親の心構えを聞きました。

【年齢別記事 中学生~大学生のママ・パパ向け】
(1) 早期化する長期留学 高校時代にこそ行く価値がある
(2) 進路選択を先延ばしするわが子 大学受験は大丈夫? ←今回はココ
(3) 日比谷高校元校長 親の期待がプラスに働く伝え方は

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明確なキャリア展望はなくても、興味ある学問を見つけることは大切

 「将来やりたいことがまだ見つからない」「行きたい学部・学科が決められない」。中高生の子どもがこのように言ったら親は心配したり、「ちゃんと考えなさい」と怒ったりするのではないでしょうか。大学入試に不利だと焦る人もいるでしょう。というのも、大学入試において、私立大学では定員の半分以上を総合型選抜と学校推薦型選抜で選ぶ時代になっているからです。総合型選抜と学校推薦型選抜では、その大学で学びたいことや、その先の人生で学びをどう生かしていきたいかを文章や面接でしっかりと伝えなくてはなりません。いわば、自分のキャリアについて、17~18歳でしっかり考えている子のほうが有利だということです。

 物理の教師として約20年間教壇に立ち、その後は管理職として多くの高校生の進路に立ち会ってきた武内さんは、「確かに総合型選抜や学校推薦型選抜では、志望理由をシャープに語るとともに、学問探究への明確な将来設計がないと通用しません。推薦入試でなくても高校時代から医師、弁護士、ITエンジニアなど具体的な職業意識を持ち、そこに向かって学びを進めていく子もいます。しかし、そういった子はむしろ少数です。今の時代でも、高校生段階で明確なキャリア意識を持っている子は限られています。圧倒的に多いのは、学部・学科選びで止まっている子です」と話します。

 武内さんが以前校長を務めた日比谷高校でも、理系か文系かは決められても、その先の学部・学科はまだ具体的に決められないという理由から、大学2年の途中で学部・学科を決める東大に進学する生徒もいたそうです。

 将来の職業に向かって突き進んでいる子がいる一方、進路決定を先送りするわが子を親は心配するかもしれません。しかし武内さんは「大学入学までに具体的なキャリア意識を持っていないからといって、心配し過ぎる必要はない」と言います。ただし、「やってみたい学問ができる学部・学科はどこか」は高校生の間におおまかに考えておいたほうがよいそうです。それにはどのようなプロセスを経ればよく、親はどのようなサポートを心掛けるとよいのでしょうか。

【この記事で読める内容】
・家庭でも取り入れられる学年別進路選択のサポート法
・進路を考える子どもに伝えるべき2つの軸
その活動(仕事・職業)であなたは「●●●●できる?」「自分の●●を追求できる?」