未成年を狙った性暴力被害のニュースが後を絶ちません。強姦や強制わいせつだけでなく、痴漢に遭う、性器を露出した変質者に遭遇してしまう、卑わいな言葉を投げかけられるといったことも性暴力被害に含まれます。女子の場合、中学生の時点で何らかの性暴力被害を受けたことがある子どもは51.8%と半数を超える調査結果もあります(※)。わが子の身を守るために家庭でできることや、子どもが被害に遭ってしまったときのケアについて、臨床心理士の藤森和美さんに聞きました。

(※)野坂祐子「児童・幼児期における性暴力被害」『武蔵野大学心理臨床センター紀要』5号、2005年、11~21頁

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性暴力被害に遭っても、子どもはとっさに逃げ出せない

 近年、SNS(交流サイト)を通して犯罪目的で子どもに近づく大人が後を絶たないなど、子どもを取り巻く環境は安全とは言いがたいのが実情です。性暴力とは、性を手段とする暴力のことで、「本人の意に反した性的な言動」を意味します。強制性交だけでなく、合意なく体を触る、性器を見せる、卑わいな言葉をかける、つきまとうといった行為もすべて性暴力となる行為です。

 「通学路や通学電車、学校、塾、繁華街も含めて、子どもは日常生活のさまざまな場所で性暴力被害を受けるリスクがある」と、子どもの性暴力被害やトラウマに詳しい臨床心理士で、武蔵野大学人間科学部人間科学科教授の藤森和美さんは話します。

 「性犯罪者は、学校の部活ごとの下校時間まで把握して、通学路で待ち伏せるなど、用意周到です。また、子どもの道徳心や優しさにつけこみ、助けが必要なふりをして声をかけ、人気のない場所へ誘導するなど卑劣な手口を使います」

 いつどこで性暴力被害に遭うか分からない中、家庭や学校では「不審者がいたら逃げなさい」と教えていることでしょう。しかし、中学生であっても現実に被害に遭ってしまうと、うまく対処できないのが普通だと言います。

 「経験や知識が乏しいことから、被害に遭ったときに逃げていいのか、助けを求めていいのか、とっさに判断できません。さらに、恐怖心で体がフリーズしてしまい、逃げ出すことができないことも多いのです」

 また、親の知らないところで子どもが性暴力被害を受け、それがトラウマとなって、その後の成長や行動に悪影響を及ぼしてしまうこともあります。

 性暴力被害を防ぐために、日ごろから家庭でできることはあるのでしょうか。また、わが子が被害に遭ってしまったときにどんなケアが必要となるのでしょう。そもそも、親に打ち明けてくれる関係性をどうすれば築くことができるのでしょうか。

この記事で分かること
・軽微に思われる性暴力でトラウマになることも
・子が性被害を打ち明けられるかは、日ごろの親の関わり方が影響
・知っておくべきPTSD(心的外傷後ストレス障害)の正しい知識

 詳しく聞いていきましょう。