本連載では、学校への取材経験が豊富な教育ライターの佐藤智さんが、保護者が気になることを現役の先生たちに聞いていきます。連載第12回のテーマは「小学校英語」について。「一時期、『小学校で英語が導入される!』と騒がれたけれど、今はどんな状況になっているのだろう」と思っている保護者も多いのでは? 実際に先生たちは、小学校英語をどう捉え、どのような授業を行っているのでしょうか。保護者会では出てこない先生のホンネや小学校のリアルな事情を聞きました。
【親が知りたいことを直撃! 先生のホンネ 学校のリアル】
これまでのラインアップ
■いじめた側を出席停止にしないのはなぜ? 先生の本音は
■探究学習は調べ学習と違う? 適当にやる子ヘの指導法
■通知表はどのようにつけている? カギは3つの「観点」
■新しい担任に不安が 前の担任に相談していい?
■積み上げ教科の算数と国語 つまずいたときの対策は?
■学校のデジタル化 意外な効果や先生の戸惑いとは
■コロナ下で子どもの笑顔減ったことも先生の心の負担に
■荒れるクラスに共通点 学級崩壊の予防と対策
■先生が多忙過ぎる理由は? 意外な仕事や改善の状況
■小学校で進む「教科担任制」の導入 先生の負担感は?
■気になる学校の安全 不審者侵入対策はどうなっている?
B先生 神奈川県の公立小学校に勤務。新卒で先生になり13年目。
C先生 栃木県の公立小学校に勤務。新卒で先生になり12年目。
小学校の英語は「話す」「聞く」を重視
2020年度から小学校で英語が必修化された。これにより、小5・小6では英語が「教科」として定められ、小3・小4では「外国語活動」として英語が教えられるようになっている。2011年から外国語活動として取り組まれてきたので、もしかしたら、「え、何か変わったの?」と感じる保護者も多いかもしれない。英語が教科になるとはどういうことなのだろうか。東京都の公立小学校に勤務するA先生はこう言う。
「教科になると他の教科同様に評価がなされます。そのため、5・6年生は、英語についても通知表でA(よい/◎)・B(できる/○)・C(もう少し/△)と成績がつきます。一方で、3・4年生は『英語に慣れ親しむ』ことが目的の外国語活動なので評価はしないこととなっている。その代わり私の勤務する学校では英語の所見欄を設けて、担任が記述することになっています」
3・4年生では週1回程度、5・6年生では週2回程度の時間が英語に割り当てられている。必修科されたのは中学年からであるが、「私の勤務する市は国際理解教育に力を入れていることもあり、低学年でも外国語活動を実施しています」と神奈川県で勤務するB先生は言う。
「保護者の中には英語学習といえば、単語を覚えて、訳文をして……といったイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、小学校の英語では基本的には単語や文法を書いて覚えるような学びはありません」(B先生)
小中高に共通して重視されていることだが、現在の英語学習は「話す(やり取り)」「話す(発表)」「聞く」「読む」「書く」の4技能5領域をバランスよく実践していくことが求められている。特に、小学校では「話す」「聞く」に重点を置いた授業が行われている。高学年を担当するC先生はこんな授業をしていると言う。
「一定のリズムに英単語や英文を乗せて発音するチャンツをしたり、ゲームをしたりしながら、楽しく英語に触れることを大事にしています。小学校の時点で英語を学ぶ面白さを感じ、なだらかに中学校と接続して、中1ギャップを無くすことも重要なポイントだと考えています」
高学年が教科、中学年が外国語活動と区切られてはいるが、その学習内容はどのように変わるのだろうか。
「中学年でアルファベットの学習をすることもありますし、高学年でもゲームをしたり歌ったりすることはあります。4年生から5年生になって、英語の学習がガラリと変わって苦労するような子はあまりいないのではないかと思います」(A先生)
