本連載では、学校への取材経験が豊富な教育ライターの佐藤智さんが、現役の先生たちに保護者が気になることを聞いていきます。連載第13回のテーマは「学校のルールや校則」について。「今、ブラック校則など騒がれているけれど、実際の学校現場はどうなっているの?」と思っている保護者の方も多いのでは。そこで今回は、小中学校の先生たちに、学校のルールや校則についてお聞きしました。保護者会では出てこない先生のホンネや小学校のリアルな事情を聞いていきます。
【親が知りたいことを直撃! 先生のホンネ 学校のリアル】
これまでのラインアップ
■いじめた側を出席停止にしないのはなぜ? 先生の本音は
■探究学習は調べ学習と違う? 適当にやる子ヘの指導法
■通知表はどのようにつけている? カギは3つの「観点」
■新しい担任に不安が 前の担任に相談していい?
■積み上げ教科の算数と国語 つまずいたときの対策は?
■学校のデジタル化 意外な効果や先生の戸惑いとは
■コロナ下で子どもの笑顔減ったことも先生の心の負担に
■荒れるクラスに共通点 学級崩壊の予防と対策
■先生が多忙過ぎる理由は? 意外な仕事や改善の状況
■小学校で進む「教科担任制」の導入 先生の負担感は?
■気になる学校の安全 不審者侵入対策はどうなっている?
■小学校英語 学び続けることが求められる先生たち
B先生 東京都内の公立小学校に勤務。新卒で先生になり12年目。
C先生 山梨県内の公立中学校に勤務。新卒で先生になり13年目。
持ち物をどう指導するかに悩む小学校
「なんでこんな校則があるのだろうか?」、違和感のあるルールに子どもも保護者も疑問を抱くことがあるかもしれない。実際に子どもたちの指導にあたっている先生たちはどんなことを感じているのだろうか。神奈川県で小学校に勤務するA先生はこう言う。
「私が勤務してきた小学校では『学校のきまり』というものがあり、それを子どもたちに伝えています。ほとんどは子どもの安全を守るためのルールで、たとえ守れなくても罰則のようなものは記載されていません。ただ、中には納得してもらうことが難しい項目や、違反なのか否かの線引きが難しい事項もあります」
先生たちが難しさを感じているのはどういったルールなのだろう。A先生はこう続ける。
「『学習に必要がないものは学校に持ち込まない』というルールがあります。具体的に『これはNG』とは記載されていないので、何が学習に必要ないかは各教員の判断によるところが大きいです。例えば、真夏にハンディー扇風機を持ってきた子どもに注意をしたら保護者からお叱りを受けたと言っていた同僚がいました。
また、教室は暖房をきかせているので使い捨てカイロは基本的に持ってこないように伝えていますが、手先が冷えやすくて悩んでいる子には注意しにくいですよね。臨機応変に対応したいのですが、『これまでは注意してきたのに容認していいのか』、あるいは『その子だけ特別扱いをしていいのか』など、自分の中で引っ掛かることがあり、葛藤しています」
持ち物指導に対しては、B先生は時代に合った対応が必要かもしれないと語る。
「私の周囲にもA先生に近い悩みを抱えている先生たちは多いです。例えば携帯電話やスマートフォンの持ち込みは基本的に禁止です。しかし、高学年になってくると持ってくる子がいて、注意をすることがあります。授業に集中できない子どもが出てくるリスクを考えてのことですが、時代も変わってきているので指導に迷いはあります」
