安定も、確かな居場所もあるのに新しい一歩を踏み出したARIA世代の起業家にお話を聞くこの連載。今回は化粧品会社などでマーケターとして活躍した後、45歳で外国人向け料理教室「わしょクック」を創業した富永紀子さん。料理を教える講師の育成も手掛け、フランチャイズで教室を広げてきましたが、新型コロナウイルス禍で観光客が激減。事業の危機をどう乗り越えたのかを聞きました。
(上)コロナで大打撃の外国人向け料理教室 逆境がチャンスに ←今回はココ
(下)40歳出産、母の介護を乗り越え起業…50代でNZ移住
日本を訪れる外国人に家庭料理を教える
編集部(以下、略) 「わしょクック」を創業して8年目を迎えました。今はどんな事業を手掛けていますか?
富永紀子さん(以下、富永) 外国人に日本の家庭料理を教える料理教室と、その料理を教える「認定講師」を養成するスクールの運営です。今、日本人以外も含めて140人ぐらい認定講師がいて、フランチャイズで教室を開いています。それと、スクールを卒業した講師が活躍できるように一般社団法人外国人向け料理教室協会も運営しています。あとは、企業向けの研修ですね。グローバル企業でも英語でのコミュニケーションに悩みを抱えているので、料理を通じてチームビルディングを促すような研修が好評です。
―― 外国人向けの料理教室は新型コロナウイルス禍でかなり影響を受けたのではないですか。
富永 本当に大変でしたね。受講者はほとんど観光客だったので、申し込みはゼロになり、そうした状況で講師になろうという人もいないからスクール受講者もゼロになってしまいました。
2014年に教室を始めてから順調に受講者が増えて19年には料理教室が年間1000人ぐらい、認定講師も毎年30人ぐらいまで増え、東京オリンピック・パラリンピックもあるから「これはいける!」と思ったとき、ほぼゼロになってしまって。それですぐにオンラインの講座を始めました。
オンラインで台所から世界が広がった
―― なるほど。オンラインの講座はいつからスタートしたのですか?
富永 緊急事態宣言が出たすぐ後、20年のゴールデンウイーク前です。それまでZoomを使ったこともなかったんですけど、いろいろなサイトから独学で学んでオンラインで外国人向け料理教室を始めました。そうしたら、すごく反響があって。世界中から申し込みが来たんです。
オンラインならメキシコやブラジルのような地球の反対側からでも受講できるし、1回で100人ぐらいの大人数レッスンもできる。オンラインって、すごいなって実感しました。本当に台所から世界が広がっていく感じで、すごく手応えを感じましたね。
それに、認定講師養成スクールにも予想外の効果がありました。