「手先の動きに不安のある人にも編み物を楽しんでもらいたい」。編み物講師としてデビューしたばかりだった平田のぶ子さんは、52歳のとき、手指を自由に動かせない人のためのかぎ針を作ろうと思い立った。商品として世に出すため、55歳で起業。今や多くの人に希望をもたらし、全国にインストラクターを30余人抱えるまでになった平田さんに半生を振り返ってもらった。
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(下)ビジネス経験ゼロ、元看護師の編み物講師が特許取るまで
キャリア構築を諦め、看護師から専業主婦へ
先天的な障害、事故、病気などによって手指を自由に動かせない、力が入らないといった人でも使える「ユニバーサルかぎ針 あみ〜ちぇ」。このかぎ針を考案したのは、埼玉県を中心に活動する編み物講師の平田のぶ子さんだ。
「あみ〜ちぇを使うことで明るくなった人、生きる希望がわき、さまざまなことにやる気が出てきた人をたくさん見てきました。家族にプレゼントしたいと、頑張って編み物に取り組んでいるシニアの方もいますよ。
編むという作業にはリラクセーション効果があり、認知機能低下のリスクが減少するという研究結果もあるので高齢者の方には特におすすめです。また、リハビリにも効果があるといわれています」
平田さんのファーストキャリアは、看護師。「私が中学3年生のとき父が亡くなり、母が電話の交換手をしながら女手一つで私たちを育ててくれました。その姿を見て女性が職を持つことの大切さに気づき、看護師を目指したんです」
3年間大学病院に勤務し、結婚して退職した。結婚後も看護師を続けたい気持ちもあったが、夫の希望もあり専業主婦となった。