看護師から専業主婦を経て、51歳で編み物講師として活動を始めた平田のぶ子さん。その3年後に夫と死別し、編み物で生計を立てる覚悟を決める。水面下であたためてきたユニバーサルかぎ針の開発に本腰を入れるため、55歳で起業へと踏み出した平田さんの半生を追う下編。

(上)「君にしかできない」夫の遺言を胸に55歳で起業の主婦
(下)ビジネス経験ゼロ、元看護師の編み物講師が特許取るまで ←今回はココ

試作にかかった150万円は創業補助金で

 ユニバーサルかぎ針の特許取得に動き始めたところで発覚した夫の病。病床で夫から「君にしかできないことだ。早く世に出して」と背中を押され、夫と死別後に起業を決意した。

 「起業に関しても分からないことばかりで、まずはさいたま総合研究所が主催していた『ガンバレ!さいたま創業スクール』を受講することにしました。それと同時に、特許を取得するため、さいたま総合研究所に所属していた弁理士さんに相談に行きました。すると、『特許取得には時間がかかるから、まずは実用新案の登録を』とすすめられたんです」

 2015年1月に実用新案の申請をし、3月には登録が完了。埼玉県の創業補助金を受け、7月に無事開業することができた。

手編みサロンあみ〜ちぇ代表 平田のぶ子さん。着用しているジャケットとブローチは平田さんの手製のもの
手編みサロンあみ〜ちぇ代表 平田のぶ子さん。着用しているジャケットとブローチは平田さんの手製のもの

 ユニバーサルかぎ針を作るにあたって、参考にできるような競合商品もなかったため、平田さんのアイデアだけで形が作られていった。はじめは100円均一ショップで売られている紙粘土やお湯で軟らかくなるプラスチック粘土「おゆまる」を使って試作を重ねていった。

一番左にあるものが紙粘土で作られた最初の模型。当初、人さし指と中指を入れるものを考えていたが、次第に握りやすいグリップ型の形状に進化を遂げていった
一番左にあるものが紙粘土で作られた最初の模型。当初、人さし指と中指を入れるものを考えていたが、次第に握りやすいグリップ型の形状に進化を遂げていった