人生における「逆転の一冊」を聞くリレー連載。今回は古坂大魔王さんに聞きました。小さい頃から「死」について興味があったという古坂さんは、身内の死を見つめ、ある本と出合ったことで「今からちょっと5、6時間だけ死んでくる」という逆転の発想を手に入れたとか。その一冊とは?

(上)古坂大魔王「ちょっと死んでくる」という発想を得た本 ←今回はココ
(下)古坂大魔王「逆転の一冊」笑いを取るために死と向き合う

祖母の急死をきっかけに考えた「死とは何か」

編集部(以下、略) お笑い芸人のほか、ピコ太郎のプロデューサーとしてご活躍ですが、「死」についてひと一倍関心があるそうですね。

古坂大魔王さん(以下、古坂) 死に対する恐怖がずっとあったんです。小学2年生のときに祖母が亡くなったのですが、当時まだ52、53歳。一緒に夕飯を食べて、その日の深夜2時に心筋梗塞で急に死んでしまって。子ども心に「死ぬっていうのは一体何なんだろう」みたいな思いがずっとありました。

古坂大魔王
古坂大魔王
1973年、青森県生まれ。92年にお笑い芸人「底ぬけAIR-LINE」でデビュー。2016年に音楽プロデュースしたピコ太郎の「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」の世界的ヒットを機にブレイク。2児の父で、NHK Eテレ「すくすく子育て」、Web配信によるライブ経済情報番組「The UPDATE」ではMCを務める

古坂 仕事の移動で新幹線に乗るときは、その前にいつも本屋さんに寄って、気になった本を読むようにしています。2018年に見つけたのは、米イェール大学で23年連続の人気講義を本にした『「死」とは何か』(シェリー・ケーガン著、柴田裕之翻訳/文響社)。ちょうど発売してすぐの頃で、書棚にズラッと並んでいた。

 もともと名言集とかを読むのが好きだったのですが、6、7年前から哲学書にはまり始めたんです。哲学書って内容のほぼ9割は分からないんですが、飲茶さんという作家の『哲学的な何か、あと数学とか』などは、口語体で分かりやすい。飲茶さんの著作はほぼ全部読みました。哲学を読むのが面白いな、自分の疑問にはまるなと思い始めていたときに、『「死」とは何か』に出合った感じです。

 以前から死についての授業っていろいろありましたよね。学校で豚を育てて、みんなで食べるまでの授業(『いのちに触れる──生と性と死の授業』)とか、生徒が刑務官と死刑囚になってみる思考実験にも関心があったので。この本に行き当たって、ちょうどいいと思って買ったら面白くて一気に読み終わっちゃいました。長女が生まれた年でもあるので、タイミングもはまったんですよね。

―― かなり分厚い本ですが、一気読みだったんですね。娘さんが誕生するタイミングで、死について考えたのも意外です。