人生における「逆転の一冊」を聞くリレー連載。今回は古坂大魔王さんの(下)です。「死について知っておけば、生きるのがすごく楽になる」――そう思わせてくれた一冊『「死」とは何か』について、そして生きること、お笑いについて語ります。
(上)古坂大魔王「ちょっと死んでくる」という発想を得た本
(下)古坂大魔王「逆転の一冊」笑いを取るために死と向き合う ←今回はココ
「食えない時代」こそ忙しく、楽しかった
編集部(以下、略) 『「死」とは何か』(シェリー・ケーガン著、柴田裕之翻訳/文響社)を読んだとき、長女も生まれて、死に対する発想の転換も生まれたということですが、人生で一番どん底だったのはいつですか?
古坂大魔王さん(以下、古坂) 30代の10年ぐらいは本当に食えなかった時代で、経済的にはどん底だったんですよ。ところがすごく楽しかったんですよね。経済的に苦しいと、月に2、3回ビビる日がやってくるじゃないですか。家賃を払う日と借金を返す日と、その前後3、4日。だから、うわーってお金のことを考える期間もあるけれど、それ以外は音楽の勉強しようとかパソコンを買おうとか、あれをやろう、これをやろうって感じだったんです。
何しろ時間がめちゃくちゃあったんで。今こうやって話している内容とか、曲作りとかは、全部、当時の勉強がベースになっています。でも勉強したつもりはなくて、仕事は暇だけどブログでは忙しいふりをしなきゃいけないんで、いろんなことをやったとせっせと書いていたんですよね。
お客さんが全然来なくてもライブを無理やりやって、ライブがあるから仕方なく曲を作って、ネタを作っていた感じです。今よりもネタも曲も作っていましたね。
―― 金銭的には苦しくても、ある種豊かな時間を過ごせていたという感じだったのですか?