しっかり向き合えば何歳からでも体は変わる。それを体現している方々の秘密に迫る連載。今回登場するのは84歳でスキューバダイビングを楽しむ澤征子さん。重いタンクを背負って海に潜る体力を維持するため週1回筋トレをしているという。トレーニングの場におじゃまして、澤さんと、ダイビングスクール「ミッドサマー」の家接(いえつぐ)剛志さんに話を聞いた。
編集部(以下、略) 澤さんはもともとマリンスポーツが好きだったのですか?
澤征子さん(以下、澤) いえ、スポーツはほとんどしたことがなくて、健康維持のためにときどきプールに行くくらいでした。それに私は泳げないし。
―― 泳げないのにスキューバダイビングを始めたのですか?
ずっと抱いていた海への憧れ
澤 海への思いは幼い頃から持ち続けていたんです。私の子ども時代は戦争中で、当時私をとてもかわいがってくれた水兵さんがいました。潜水艦が横須賀に入港すると肩車をしてくれたり、一緒に遊んでくれたりして。その人が南太平洋で戦死したんです。海を見ると、あの水兵さんが眠る海とつながっているんだなとずっと思っていました。
それに、父は以前フィリピンでゴム園の事業を任されていたので、きょうだいの中にはフィリピンで生まれた者もおりました。小さい頃から南太平洋の話をずっと聞いていたので憧れがありました。
―― ダイビングを始めたきっかけは何だったのですか?
澤 憧れの南太平洋に友人と旅行に出かけたとき、海辺で水遊びをしていると「海に潜ってみたら中は別世界だよ」と言ってくれた人がいました。
帰国後にダイビングをしてみたいという思いが強くなったので、娘の職場の近くのダイビングスクールで働いていたインストラクターの家接剛志さんに娘から相談してもらったんです。その当時、私は62歳で、普通は60歳を過ぎた初心者なんてなかなか相手にしてもらえませんが、快く受け入れてもらえました。
それ以来、家接さんが独立してもずっとついて回っているような感じです(笑)。