赤坂の雑居ビルの一角にある桃源郷のような「昼スナックひきだし」。紫乃ママの元に、大手企業で3年間、D&Iを担当した45歳の女性がご来店。真っ昼間からグラス片手に、特濃スナックトークが始まります。使命感に燃え、「組織に風穴を開けたい」と頑張ってきたけれど…。異動した今だから語れる企業の「女性活躍推進」の光と闇とは?
紫乃ママ いらっしゃい、あら由香さん。
由香 お久しぶりです。やっと総務部から別の部署に異動できました!
私って「女性枠」なんだと気づかされた
紫乃ママ なんだか少し元気になったみたい。由香さん、苦労していたものね。
由香 総務部にいるときはずっともやもやしていました。希望して女性活躍推進の担当になったわけでもないのに、部長や役員から「子どもがいないのに、何でおまえがそのポジションなんだ?」って言われたんです。
紫乃ママ その発言のデリカシーのなさ! マジでひくわ。いまだに女性活躍って、子育てしながら働く女性の両立支援だと思っているおじさんが多いのよね。しかも、本人に直接言うってさぁ、いい根性してるわ。
由香 「こいつには言っても大丈夫だろう」って思ったんでしょうけど。いまだにプライベートはどうなんだ? って詮索もされます(笑)。
紫乃ママ うわ、それ、アウトなやつよね。由香さんの会社って外から見ると「女性が働きやすい会社」っていうイメージがあるのにね。
由香 上層部は「女性が働きやすい会社ランキング」みたいなのを異常に気にしていますね。ランキングの上位に入らないと上司から怒られます。特に同業他社には負けるなって。
男女の賃金格差を数字で公表すると決まったときも(編集部注:2022年7月に女性活躍推進法が改正され、従業員301人以上の企業には男女の賃金格差公表が義務づけられた)、何とか格差を目立たないようにするための策を考えろと。「男性だけに支給される〇〇手当を数値に反映させないようにできないか」とか。他社のD&I担当と話しても、結局みんないかにD&Iの指標になる数値を上げるかばかり考えさせられています。要は数字のつじつま合わせです。
紫乃ママ 男女の賃金格差や女性管理職比率を公表しても、本質を変える気はない、と。今どき男性だけがもらっている手当とか、意味不明……。