赤坂の雑居ビルの一角にある桃源郷のような「昼スナックひきだし」。紫乃ママの元に、新刊著書で能力至上主義の社会を喝破し「責められるべきは、あなたの能力だけではない!」と説く、組織開発の専門家・勅使川原真衣さんがご来店。特濃スナックトークが始まります。
(上)能力社会の生きづらさ「咲ける場所を探す」でラクになる(doors)
(下)組織開発のプロが命懸けで伝えたいこと 能力社会に警鐘 ←今回はココ
「諦めるべきことではないと思えた」
紫乃ママ 真衣さんの『「能力」の生きづらさをほぐす』(どく社)は、母親と新卒2年目の息子、高校生の娘の3人の対話形式で話が進むけど、若者だけじゃなくて40代、50代にも、めちゃくちゃ響くと思う。私らの世代は社会人になってから「能力主義」なんて言葉にずっとさらされてきた世代ですもの。そして更に子どもたちに対してそれをあおってる世代でもある。真衣さんが能力社会に警鐘を鳴らしたっていう、ある種の自己批判をしているのは見習うべき姿勢よ。
勅使川原真衣さん(以下、勅使川原) そう言っていただけてうれしいです。この本を読んだ感想で多いのが「腑(ふ)に落ちた」というもの。「ずっと抱えていたモヤモヤを言語化してもらいました」って。あなたのモヤモヤは、本当に「能力」が低いからなのか。そうじゃないでしょうって。組織がうまく回らないのを、個人の能力だけに責任を負わせる「能力主義」の主張に覚える違和感はどうしてもぬぐえません。
いわゆる企業コンサル的な価値観での仕事の勝ち負けがあって、その土俵の上で勝ちたいんだったら一元的な正しさに向かう、つまり「○○力を身につける」方向にどんどん突き進まなければならないかもしれない。でも、それは茶番だったんですね、と。茶番って気づけただけでもすごいじゃないですか。40代、50代には「もう諦めていました」という方がたくさんいました。でも、「諦めるべきことではないと思えたのが収穫です」っておっしゃってくれて。
紫乃ママ 「能力なんて幻の存在」って書いていましたもんね。
勅使川原 前回もお話ししましたが、本を執筆する大きなきっかけはステージ3Cの乳がんが見つかったことだったんです。「これで勅使川原は終わったな」なんて心ない一言を言う人材業界の女性もいました。
紫乃ママ ええ、何それ、信じられない!