この連載では、若手時代から組織やチームをけん引する女性に、リーダーとして活躍するためのヒントを聞いています。今回登場するのは、米ロサンゼルスで、フードテック事業を展開するCashi Cake(カシケーキ)のCEO(最高経営責任者)を務める三木アリッサさん(30歳)。帰国子女の三木さんは日本の学校になじめず、不登校だった時期もあったといいます。そんな彼女がなぜ、日本文化にフォーカスした事業を米国で展開することになったのでしょうか。(下)では、起業にかける思いや今まで経験した米国ならではの苦労について話を聞きました。

(上)貯金200万円、20代で渡米し起業「和菓子を世界に」
(下)商品の3割盗難、資金ショート寸前…米国で起業後の苦悩 ←今回はココ

三木アリッサさん。1992年、米ニューヨーク生まれ。2019年にCashi Cakeを創業
三木アリッサさん。1992年、米ニューヨーク生まれ。2019年にCashi Cakeを創業

日本にも米国にも居場所がなかった

 金融業界で働く父親とアーティストとして活動する母親の元に生まれた三木アリッサさん。9歳まで米ニューヨークと日本を行き来する生活をしていましたが、2011年の9.11同時多発テロをきっかけに、日本に帰国しました。

 しかし、帰国子女の三木さんは日本の文化が合わず、いじめや不登校などを経験。社会人になって外資系企業に就職した後も、「日本になじめない」という感覚は続いていました。

 「とはいえ、米国が自分にフィットしているというわけではなかったんです。米国にいるとき、母が作ってくれたおにぎりを食べていたら『黒い変なものを食べている』と周囲からからかわれたりして。日本でも米国でも居場所がなく、ずっと『自分の存在意義って何だろう』と悩んでいました

 日本のベンチャー企業やイスラエルの企業で働く中で、さまざまな価値観に出合い、日本文化のよさを徐々に理解できるようになったと三木さんは言います。さらに、母親がアーティストとしては評価されているものの、ビジネス面で苦戦している姿を見て、「アーティストや職人が経済的にも成功できるような仕組みを構築したい」と思うようになりました。

 「9.11の直後、混沌とした米国の空港で赤十字のスタッフが子ども向けにお菓子を配ってくれたことが心に残っていて、いつかお菓子に関わる仕事をしたいと考えていました。そこで注目したのが、海藻の加工技術です。

 日本食に海藻がよく利用されていることもあり、日本はこの分野の研究において世界でリードしています。この技術力を日本の伝統文化である和菓子に活用し、『日本はこんなにすごいんだ』と伝えたいと思い、渡米して和菓子D2C事業をスタートしました」