「人生の新たな扉を開けた挑戦者たち」に迫る新連載が始まりました。一歩を踏み出す不安とどう向き合い、葛藤をどう乗り越えたのでしょうか。下編では2023年1月に日向坂46を卒業し、小説家としても活動する宮田愛萌さんに、初の短編小説集『きらきらし』(新潮社)に込めた思いや執筆活動の目標を聞きました。

(上)日向坂46卒業の宮田愛萌 万葉集好きアイドルが作家に
(下)日向坂46卒業の宮田愛萌 次の挑戦は長編小説の執筆 ←今回はココ

万葉集には「こういう楽しみ方もあるんだ」と知ってもらいたい

編集部(以下、略) 新刊の『きらきらし』ではなぜ、万葉集をモチーフとした小説を執筆したのでしょうか。

宮田愛萌さん(以下、宮田) 書籍を出版するオファーを受けたときは、短歌集や詩集を書き下ろしで出すという話もありました。ただやはり、万葉集を重要なテーマにしたいという思いが強くありました。国学院大学文学部で学んだことを生かしたかったのと、万葉集にもっと興味を持ってもらいたいと思ったんです。万葉集は古典の中でも、「理解しにくいもの」「とっつきにくいもの」と思われがちです。

 でも、人間味にあふれる歌が多くあり、実は私たちにとって身近な歌もたくさん収録されています。皆さんが万葉集に触れるきっかけをつくりたくて、私の作品には等身大の高校生や大学生の女の子を登場させました。「こういう楽しみ方もあるんだ」、と知る機会になれたらと思い、万葉集をテーマにしました。

 ちなみに、万葉集の入門としておすすめなのは、『日本の古典をよむ(4) 万葉集』(小学館)です。私自身、大学在学中から読んでいて、今回の作品でも参考文献として紹介しています。『きらきらし』を通して古典に興味を持ったら、ほかの作品にも手を伸ばしてみてください。

『きらきらし』の現代語訳を監修したのは、宮田さんが在学時に授業を受けたこともある国学院大学の土佐秀里教授。土佐教授は「宮田さんのような若者に影響ある人が、万葉集や古典を案内してくれるというのは、古典教師としては本当にうれしくありがたいことです」とコメントしている
『きらきらし』の現代語訳を監修したのは、宮田さんが在学時に授業を受けたこともある国学院大学の土佐秀里教授。土佐教授は「宮田さんのような若者に影響ある人が、万葉集や古典を案内してくれるというのは、古典教師としては本当にうれしくありがたいことです」とコメントしている