従来の枠組みにとらわれず、さまざまに越境することで道を切り開く人たちを紹介する本連載。今回登場するのは弁護士資格を取得後、大手法律事務所、スタートアップ企業などを経て、現在は経済産業省のスタートアップ創出推進室に所属している南知果さんです。上編では、南さんが日本トップの大手法律事務所を辞め、右も左も分からないスタートアップ業界に挑戦した理由について聞いています。
(上)法律事務所→ベンチャー→官僚…ある思いを胸に奔走 ←今回はココ
(下)31歳の留学で言語の壁「弁護士として貢献の場は日本」
「日本を元気にする手伝いをしたい」こんな思いを胸に、弁護士という仕事を軸に、働き方を縦横無尽に変えている南知果(33歳)さん。日本トップの法律事務所から社員数人のスタートアップへ。後に転職したスタートアップでは、半年後に大半のメンバーが整理解雇され、自身もその会社を去るという苦い経験もし、現在は、経済産業省のスタートアップ創出推進室に所属する。彼女が挑戦を続ける理由は?
入所3年目、SNSがもたらした大きな転機
2014年に司法試験に合格した南さんは、司法修習を経て大手法律事務所の西村あさひ法律事務所に入所した。
「もともとは地元・大阪にある法律事務所で働くつもりでした。しかし、東京の法律事務所で行われたサマー・クラーク(夏季インターン)に参加したとき、都内を拠点にしている事務所とそれ以外とでは、扱う業務内容や規模の数がまったく違うことに驚きました。
例えば、企業のM&A(合併・買収)案件も、都内のほうが大規模なものが多いんです。弁護士になったら『日本を元気にする手伝いをしたい』という思いがずっとあったので、インパクトのある案件に関われる西村あさひ法律事務所で働くことを決めました」
入所したときには、両親も喜んでくれたという。思い描いていた弁護士像に近い仕事を手掛けることが出来、東京での生活も生活にも慣れ、いわば絵に描いたようなエリート街道を歩いていた南さん。大きな転機は入所3年目の18年、フェイスブックで見かけたある投稿だ。