従来の枠組みにとらわれず、さまざまに越境することで道を切り開く人たちを紹介する本連載。今回は弁護士資格を取得後、大手法律事務所、スタートアップ企業などを経て、現在は経済産業省のスタートアップ創出推進室に所属している南知果さんです。下編では、30歳で留学を決意したきっかけや留学先で「今までのキャリアがゼロになった」と感じた体験、経済産業省で実現したい未来を聞きました。
(上)法律事務所→ベンチャー→官僚…ある思いを胸に奔走
(下)31歳の留学で言語の壁「弁護士として貢献の場は日本」 ←今回はココ
社員の大半がレイオフ…米国留学を決意
南知果さん(33歳)が所属していたスタートアップ企業では、資金調達がうまくいかず、2019年に大規模なレイオフ(整理解雇)が実施された。法務などを担当していた南さんはその対象にはならなかったものの、会社の方向性が大きく変わるということもあり、退職を決意。以前所属していた法律事務所ZeLoに戻った後、次のキャリアに選んだのは、ロースクールへの進学を目的とした米国留学だった。
「学生時代に短期留学をしたこともあり、またいつか留学をしたいという気持ちは、ずっとありました。でも、研修を目的とした留学制度がある西村あさひ法律事務所を辞めてからは難しいだろうと思い、諦めていました。そんな中で、次のキャリアを探さなければならない状況となり、ふと頭に『米国留学』という選択肢が浮かびました」
しかし、米国留学を実現するには、資金の工面や語学力の向上など越えなければいけない大きな壁があった。特に金銭面に関しては、米国のロースクールの学費は日本に比べて高く、生活費も多くかかる。そこで、南さんはある交渉をした。