2021年に育児・介護休業法が改正され、22年から「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度がスタートしました。かつての「ママのワンオペ」が当たり前のように見られた時代から、少しずつですが、着実に「パパが主体的に育児する」時代へと歩みを進めています。

また、新型コロナウイルス下で働き方も見直され、それぞれの家庭が自分たちに合った家族のあり方を追求するようになりました。そんな多様化するパパやその家族の今に迫る本連載。今回は、進学から就職まで計画的に人生を歩んできたものの、妻や同僚から刺激を受け転職、そして初めての子育てに奮闘する田嶋健太さんのパパライフに迫ります。

■今回のパパ
田嶋健太さん 29歳 
会社員(保育系ITベンチャー プロダクトマネージャー)

■家族構成
妻 28歳 会社員(ブライダル関連 フラワーコーディネーター 育休中)
長男 生後7カ月

進学、就職と順風満帆なルートを進んできた

 浜松市で生まれた田嶋さん。幼い頃からコツコツ努力をするタイプで、頑張った分だけ結果が反映されやすい勉強が得意だったとか。大企業で働く父親と専業主婦の母親という、昔ながらのロールモデルのような家庭で育ちました。

 サッカーに夢中だった少年時代を送りましたが、早いうちからプロになるのは現実的ではないと考え、有名大学に進学、新卒で大手通信企業への就職を決めました。しかしその直後、新卒1年目のときに順風満帆な人生を歩いてきた田嶋さんの価値観を大きく変える出会いが訪れます。

 「それが妻との出会いでした。お金や職業といったステータスを全く気にしないタイプで、それまでの人生では出会ったことがないタイプの女性だったんです。

 高校生のとき、好きなことを仕事にするために大学ではなくフラワーデザインの専門学校に行くことを決めたと聞いて、親のアドバイスを聞きながら進路を決めてきた自分とは違うなと、新鮮に感じたことを覚えています」

 そんな妻と付き合うようになり、いい刺激になって視野が広がったという田嶋さん。仕事では変わらず順調にキャリアを積んでいたそうですが、同期入社で仲のよかった同僚が転職したことが、また田嶋さんに影響を与えることになります。

 「この同僚とはずっと同じ会社で一緒に働くんだろうなと漠然と思っていただけに、どこか裏切られたような感覚があったことを覚えています。でも、このとき初めて『自分もこのままでいいのだろうか』と考えたんです。

 大企業でもリストラが増えていますし、頭ではもう終身雇用の時代ではないとわかっていました。だからといって、僕は何か新しい資格やスキルを得るようなことはしていませんでしたし、転職も頭にありませんでした。しかし、実際に転職して収入も上がり、生き生きと働いている元同僚の姿に刺激を受け、起業や転職という選択肢を真剣に考えるようになったんです」

 田嶋さんは起業を目指す人や起業経験のある人たちが集まるコミュニティに参加してみましたが、その熱量の高さに「自分は起業するより、会社員として働くほうが向いている」と感じ、転職活動を始めます。

 そして、2020年6月にITベンチャーに転職した田嶋さん。新型コロナウイルスが猛威を振るい始めたばかりのタイミングということもあり、両親や友人などからかなり心配されたそうですが、転職経験があった彼女から背中を押され、決断。そして、同じ年の11月に結婚しました。

 ここまでの話でも慎重な性格がうかがえる田嶋さんですが、妻との結婚にも実は長い準備期間があったのです。