心の「隙間」に映画が
中学・高校と学生兼モデルとして過ごし、高校を卒業してからモデル一本になりました。ずっと雑誌『Olive』の専属モデルをしていたのですが、20歳で専属を卒業して、他の雑誌でもお仕事をするようになって。たくさんの人たちに会って、「モデルだけをやっていたほうがいいよ」とか「さまざまなことを体験したほうがいい」とか、いろいろな考え方に触れました。そのうちに、自分の中に何だか分からない「隙間」ができていたんです。そんな時に、映画の出演依頼がありました。
モデルの時と同じで、女優になるなんて想像もしていませんでした。それまでにも映画の出演オファーはいただいていたのですが、「無理です!」とお断りしていました。映画は見るもので、自分が出るものじゃないと思っていましたから。
だから、その時も最初はお断りしました。でも、事務所の社長がきっと私の様子に何か感じるところがあったんでしょうね。「監督に会ってみたら」と言われたんです。「会ってみて、あなたが『やっぱり違う』と思うかもしれない。けれど、監督も『やっぱり違う』と言うかもしれないよ」と。何だかその言葉でとても気が楽になって、とりあえずお会いしてみることにしました。
当たり前ですが、監督も人間なんですよね(笑)。映画の世界には、モデルの仕事では会ったことのないタイプの方々がいて、もうそこで興味を持ってしまって。それが初めての映画のお仕事でした。
現場が一つになっていく
ただ、やっぱり現場は怖かったです。初めてのこと、分からないことばかりで。でも、モデルとはまた違う世界で、また違うプロフェッショナルの人たちがいて、それが面白かったんです。
例えば、撮影現場には「光をつくる」人がいるんですね。私にはよく分からない、フライパンみたいなものをのぞいて、光の様子を見ている。監督は監督で、「その場にない何か」を見ていて、演技のアドバイスをしてくれる。そして、撮影中に現場がどんどん一つになっていくのを感じました。それがたまらなかった。
演技が好きなんて思えなかったけれど、でも何かが面白い。ものすごく大変だったけれど、「またあれを経験したい」と興味が出てきました。