中学生でモデルを始め、10代でファッション雑誌の専属モデルに。今では女優として数々の映画やドラマに出演、BS松竹東急のドラマ「À table!(ア・ターブル)~歴史のレシピを作ってたべる~」では、主演の藤田ジュン役を演じている市川実日子さん。「自分がモデルになるなんて、思ってもみなかった」という市川さんに、これまでのキャリアを振り返る話を聞きました。

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市川実日子さん
市川実日子さん
1978年、東京都生まれ。10代からモデルとして活動し、94年から雑誌「Olive」の専属モデルを務める。映画「タイムレスメロディ」(00)で女優デビュー。「シン・ゴジラ」(16)では第40回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。23年1月スタートのBS松竹東急のドラマ「À table!(ア・ターブル)~歴史のレシピを作ってたべる~」では、主演の藤田ジュン 役を演じる

プロの姿に感銘を受けモデルの道へ

 モデルになったのは、姉がきっかけです。2歳上の姉が15歳くらいからモデルを始めていました。妹がいるというと、「会ってみたい」と言われたそうです。何度か雑誌編集部から電話をいただいたのですが、全部お断りしていました。姉が出ている雑誌は見ていましたが、自分がそれをやってみたいとは、考えたこともありませんでした

 友だちがモデルに興味を持っていて、「友だちと一緒なら……」という気持ちで、美容室のカットモデルの撮影をしたのが最初の仕事でした。たしか、14歳くらいだったかな。その時の撮影が衝撃的でした。カメラやメイクの方、たくさんの大人が全員こっちをじーっと見て「こうしたほうがいいかな」「もう少しこうしてみよう」と話し合っているところがすごく格好良くて。

「自分がモデルをやってみたいとは、考えたこともありませんでした」
「自分がモデルをやってみたいとは、考えたこともありませんでした」

 まだ中学生ですから、親と先生以外の大人と接する機会なんてありませんでした。だから、漠然とした「大人」というものが怖かったんですよね。お誘いの電話をもらった時も、どこか怖かったのかもしれません。でも、真剣に撮影をしている大人たちを目にしたら、怖いという気持ちよりも……、中学生ながらにプロの姿をとてもすてきだと思ったんです。

 しかも、その大人たちのまなざしはモデルの私を向いているわけです。カメラを向けられるのは恥ずかしかったけれど、その先にいる大人は格好良い。

 恥ずかしいという気持ちはなかなか消えませんでしたが、格好良い大人たちと一緒に、私もものづくりに関わりたかったのだと思います。「表に出る」というより、「何かものをつくりたい」という気持ち。その時自分ができることはモデルだったから、じゃあそれを頑張っていこうという流れでモデルを始めました。