「伝説の家政婦」と呼ばれ、各家庭から引っ張りだこのタサン志麻さん。(下)では「やめたこと」に焦点を当て、レストランをやめたときの心境や、結婚を経て変わったという自身の性格について話してくれました。

(上)置き手紙一つで退社…その後に出合えた天職
(下)挫折をしても「好き」を諦めなくてよかった ←今回はココ

タサン志麻さん
タサン志麻さん
たさん・しま/大阪あべの・辻調理師専門学校、同グループ・フランス校を卒業。帰国後は老舗フレンチレストランなどで勤務し、2015 年にフリーランスの家政婦として独立。各家庭の家族構成や好みに応じた料理が評判を呼び「予約が取れない伝説の家政婦」となる。著書に『この人と、一緒にいるって決めたなら タサン志麻&ロマン、私たちの場合』(日経BP)、『伝説の家政婦 沸騰ワード10 レシピ』(ワニブックス)など多数

置き手紙一つ残し、レストランを辞めた

 もともと、私はすごく「トゲトゲした性格」でした。よく言えば仕事に一生懸命。けれど、自分のミスも他の人のミスも許せなくて、同じミスを繰り返す人は本気で料理と向き合っていないとさえ感じていました。

 それでいて、自分の意見は言えなかったんです。特に目上の人に対しては、自分の意見があっても全く言い出せない。振り返ってみると、言いたいことを伝えられずにダメにしてしまった人間関係がたくさんあります。

 10年以上働いたレストランを辞めたときもそうでした。日本ではフランス料理というと、どうしても高級なイメージがあり、両親や友達が気軽に食べに来るようなものではありません。けれど私がフランスで見てきたのは、毎日の食卓で、気軽に食べられるフランス料理でした。そのギャップにモヤモヤしつつも、どうしていいのか分からず、でも誰にも打ち明けられない……。

 悶々(もんもん)とした思いを抱えたある日、ついに気持ちが爆発。35歳のとき置き手紙を一つ残し、レストランを辞めたのです。大胆な行動に出てしまったかもしれないけれど、選択肢がそれしかなかったので後悔はしていません。