ドラマ黄金期に青春時代を過ごしてきた「テレビっ子」なARIAさんたちに、ドラマやテレビの最新情報をお届けする本連載。今回取り上げるのは、2023年1月期ドラマの大本命と注目される「ブラッシュアップライフ」。独特な世界観を持つバカリズムの脚本で、芸達者な俳優たちがこれでもかというほど登場。「バカリズムの静かなる狂気を感じる」と評するドラマコラムライター田幸和歌子さんの視点で、話題作を追っていきます。

リアルと同じ肌触りと「平熱」の温度で描かれるSFドラマ

 放送開始前から、ドラマ好きの間で2023年1月期ドラマの大本命として注目されていた、バカリズム脚本×安藤サクラ主演の「ブラッシュアップライフ」(日本テレビ系)。夏帆、臼田あさ美、三浦透子、志田未来などの「架空OL日記」チームに加え、木南晴夏、松坂桃李、染谷将太、黒木華などの顔触れだけですでに期待が高まる。

 しかも、今回は「バカリズムが壮大なスケールを持て余し、不思議な日常を描く地元系タイムリープ・ヒューマンコメディー」という。いったいどういうものなのか。

バカリズム脚本×安藤サクラ主演の「ブラッシュアップライフ」(日本テレビ系)
バカリズム脚本×安藤サクラ主演の「ブラッシュアップライフ」(日本テレビ系)

 実際に見てみると、第1話では「架空OL日記」(17年/読売テレビ)を思い出す、脈絡なくあちこちに飛びまくる女性3人のとりとめないおしゃべりが繰り広げられ、楽しく心地良い。同じくバカリズム脚本で、マンションの住人として本人役でバカリズムやオードリー・若林正恭、二階堂ふみらが出演し、互いの部屋を行き来する仲間になる「住住」(17年~/日本テレビ系)などとも近いテイストだ。この3人のやりとりだけで「永遠に見ていられる」と称されるタイプの“日常系”“雑談系”ドラマと言えるだろう。

 ところが、本作の場合は、大きな柱に「生まれ変わり」「タイムリープもの」というSF的要素がある。SF的な物語の運びは、バカリズムが脚本兼出演を果たした「世にも奇妙な物語2012年秋の特別編」(フジテレビ系)や、それを発展させた印象のあるバカリズム原案・脚本の「ノンレムの窓」(22年〜/日本テレビ系)で経験済み。振り返れば、毎回のゲストがさまざまな人生の選択の失敗に苦しむ乗客として出演、やり直したい過去に遡り、その選択をやり直す「素敵な選TAXI」(14年〜/関西テレビ放送)の時点で、すでに本作の発想の源はあったように思う。

 言ってみれば、本作は、バカリズムのこれまで蓄積してきたノウハウや試してきた実験の数々を総動員した集大成にも見える。

 しかも、身近にいそうなリアルな人物像や、あるある満載の共感度高い会話の一方で、そうしたリアルと同じ肌触りと「平熱」の温度で、とっぴな“生まれ変わり”が描かれること。そして、タイムリープものという非日常設定なのに、描かれるのは延々と続く平凡な日常というところに、バカリズムの静かなる狂気を感じる。