ドラマ黄金期に青春時代を過ごしてきた「テレビっ子」なARIAさんたちに、ドラマやテレビの最新情報をお届けする本連載。今回取り上げるのは、恋愛ドラマの大御所たちが脚本を手掛ける「夕暮れに、手をつなぐ」と「星降る夜に」。2023年1月期、北川悦吏子と大石静が描く世界は、視聴者たちにどのように受け入れられたのか。ドラマコラムライターの田幸和歌子さんが独自の目線で掘り下げます。
「恋愛の神様」と「ラブストーリーの名手」
女性脚本家の手掛ける作品が多数そろった2023年1月期の連続ドラマ。中でも40~50代の読者世代にとって思い入れの強い脚本家といえば、「愛していると言ってくれ」(1995年/TBS系)や「ロングバケーション」(96年/フジテレビ系)など数々の恋愛ドラマをヒットさせてきた北川悦吏子と、NHK連続テレビ小説「ふたりっ子」(96年)や「セカンドバージン」(2010年/NHK総合)、「大恋愛~僕を忘れる君と」(18年/TBS系)など、時代時代で幅広いヒット作を生み出してきた大石静だろう。
どちらも「恋愛の神様」(北川)、「ラブストーリーの名手」(大石)と称される大御所脚本家で、くしくも同じ火曜のドラマを手掛けている。前者の作品が広瀬すず主演・永瀬廉出演の「夕暮れに、手をつなぐ」(TBS系)で、後者の作品が吉高由里子主演・北村匠海出演の「星降る夜に」(テレビ朝日系)だ。
両者を比較すると、世帯視聴率に加え、Tver(ティーバー)再生数、お気に入り登録者数でも「星降る夜に」に軍配が上がるが、数字・評価共に明暗が分かれてしまったのはなぜなのか。
大石静脚本×吉高由里子主演といえば、NHK大河ドラマ「光る君へ」(24年)が控えている以前に、「知らなくていいコト」(20年/日本テレビ系)のタッグであり、まず間違いないクオリティーになることは予想された。
にしても、やっぱりうまい。本音を押し込めて生きるマロニエ産婦人科医院の産婦人科医・雪宮鈴(35歳/吉高)と、遺品整理士として働く聴覚障がい者の柊一星(25歳/北村)の「10歳差恋愛」が描かれる作品だが、驚くほどに2人の間では「10歳差」を感じない。また、2人のやりとりがあまりにナチュラルでいとおしいために、当然大変さはたくさんあるはずなのに、「聴覚障がい」を見ている側が忘れてしまう瞬間が多々ある。