ドラマ黄金期に青春時代を過ごしてきた「テレビっ子」なARIAさんたちに、ドラマやテレビの最新情報をお届けする本連載。今回取り上げるのは、長澤まさみ主演のドラマ「エルピス―希望、あるいは災い―」。人気脚本家・プロデューサーが作り出す世界で、私たちは何を思うのか。そして私たちはなぜここまで魅了されてしまうのか。ドラマコラムライター田幸和歌子さんが、話題作の核心に迫ります。
今期一番の問題作かつ意欲作
終盤を迎えている2022年10月期ドラマ一の問題作かつ意欲作、長澤まさみ主演の「エルピス-希望、あるいは災い-」(カンテレ制作・フジテレビ系)。
本作は、NHK連続テレビ小説「カーネーション」(2011年度下半期)などの渡辺あやによるオリジナル脚本×「カルテット」(TBS系/2017年)、「大豆田とわ子と三人の元夫」(カンテレ制作・フジテレビ系/2021年)などの佐野亜裕美プロデューサー×大根仁監督による、実在する複数の事件から着想を得た社会派エンターテインメントだ。
文句なしに面白い。と同時に、毎週モヤモヤや怒りと共に、視聴者一人ひとりが自身の負い目と向き合わざるを得ない、痛みを伴う作品でもある。
スキャンダルで降板した女子アナウンサー・浅川恵那(長澤)と、バラエティー番組の新人ディレクター・岸本拓朗(眞栄田)が10代の女性が連続して殺害された事件の冤罪(えんざい)疑惑を追う中、自身の「価値」を取り戻す物語。
拓朗はヘアメイクの大山さくら・通称「チェリー」(三浦透子)に弱みを握られ、ある死刑囚の事件を追うことになり、大山の助言で、かつて冤罪事件を取材していた恵那を頼るところから事件は動き出す。
恵那は週刊誌に路上キス写真を撮られてから、深夜のバラエティー番組「フライデーボンボン」のコーナーMCに降格された落ち目アナ。
しかし、落ち目になったのは実はスキャンダルのせいではなく、高い志を持って報道番組のキャスターになったものの、セクハラやパワハラばかりで忖度(そんたく)だらけの現実に疲弊し、心がずっと前から死んでしまった抜け殻状態であったためだ。