宝塚歌劇団時代は「情報量の多いおじさん」として新ジャンルを切り開き、退団後は会社員に。現在は起業し、脚本家・演出家・舞台人のエンターテイナーとして活躍する天真みちるさんの「失敗してもくじけない」雑草魂。3回に渡って、天真さんの七転び八起きの道に迫ります。

(1)おじさん芸で新境地!宝塚退団後は会社員に ←今回はココ
(2)宝塚で挫折後に起死回生!磨いたおじさん芸
(3)今の夢は宝塚歌劇の脚本を書くこと

人さし指1本でタイピング。ビジネス用語はもはや呪文…

 「タカラヅカを卒業して、2週間後にサラリーマンになりました」

 そう話すのは、元・宝塚歌劇団花組の天真みちるさん。愛称は「たそ」、2006年に初舞台を踏んだ92期生。同期には、宙組トップスターを約6年間務めた真風涼帆さんや月組2番手スターの鳳月杏さんらがいる。タカラヅカのあの豪華絢爛でキラキラな舞台を卒業して、わずか2週間後には「満員電車に1時間半揺られ、会社に出勤した」という異色のキャリアの持ち主だ。

 「友人が立ち上げたイベント会社に誘われて就職したものの、WordもExcelも使ったことがなくて、人さし指1本でタイピング。MTG、リスケ、レジュメ……ビジネス用語はもはや呪文にしか聞こえませんでした」

宝塚歌劇団に所属したのは12年間。「タカラヅカで過ごした時間が、自分の新たな夢をかなえる道をつくってくれていました」
宝塚歌劇団に所属したのは12年間。「タカラヅカで過ごした時間が、自分の新たな夢をかなえる道をつくってくれていました」

 タカラヅカは特別な聖域だ。宝塚歌劇団に入れるのは10代の間に宝塚音楽学校で「清く正しく美しく」を順守してきた人のみ。だが、音楽学校を卒業した40人が毎年入団するため、代替わりも必須。退団後は、突如、社会に解き放たれるために戸惑う人も多いという。

 が、天真さんは「少しでも休んだら一生働きたいと思えなくなるかも」と、すぐに会社員として社会人デビュー。つい数日前までタカラヅカの大階段でエトワール(フィナーレでスポットライトを浴びて主題歌を歌い上げる大役)を務め上げた元タカラジェンヌが満員電車に揺られて名刺を差し出して……。

 そんな会社員経験を経て、今、天真さんは自ら会社を立ち上げ、舞台やアニメの脚本、演出、劇団主宰、舞台人として、八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍を見せている。そのすべての糧になっているのがタカラヅカ時代の失敗と大きな挫折だ。

著書『こう見えて元タカラジェンヌです』『こう見えて元タカラジェンヌです  遅れてきた社会人篇』(いずれも左右社)。タカラヅカOGのリアルが詰まった抱腹絶倒のエッセーはシリーズ累計2万部を突破
著書『こう見えて元タカラジェンヌです』『こう見えて元タカラジェンヌです 遅れてきた社会人篇』(いずれも左右社)。タカラヅカOGのリアルが詰まった抱腹絶倒のエッセーはシリーズ累計2万部を突破