多くの人がいつかは向き合う介護。一人ひとり状況も悩みごとも違っても、話をしたり聞いたりすることで心が軽くなることも。読者の実際の体験や思いを聞きます。活発だった母が、病気治療のために服用した薬の影響でうつに。一時的なつもりで実家に帰った美里さんの予想を裏切り、母は悪化の一途をたどります。このままでは仕事も介護も続けられないと、焦りと不安がつのります。
入院中の77歳の母の看病のために、神戸の実家で暮らしながら、東京本社の部署を管轄する管理職を務める。母は病気治療の影響でうつ病を発症し、精神科に入院したり、老健施設に入ったりを繰り返しており、現在は要介護3で認知症の兆候も出始めた。兄と妹がいるが、美里さんがメインで介護をしている。
本格介護に突入する直前
思わぬうつ病発症で母が入院
貧血治療の薬の影響で母はうつを発症
2021年7月に、母は自己免疫性溶血性貧血と診断されました。赤血球が破壊されてしまう病気で、ひどい貧血の症状がありました。母はもともと高血圧のためにかかりつけ医で定期的に受診していたのですが、見過ごされていたようです。そのうち体調がかなり悪くなって大きな病院に行ったところ病気が見つかりました。
その頃、私は駐在員として海外で勤務していたのですが、ちょうど帰国のタイミングで母の病気が分かったので、勤務地を東京の本社でなく、母が住む実家がある神戸にしてもらいました。当初は、入院治療が終わって母が帰宅し、しばらくして落ちついたら東京に戻れるだろうと考えていました。
ところが、治療の初期に大量に服用したステロイド剤の影響でまれにうつ病になることがあるらしく、9月ごろから眠れなくなったり食べなくなったりと母にうつ症状が出るようになったのです。
初めは自宅で様子を見ていたのですが、母のうつ症状は悪化の一途をたどり、12月ごろからは自殺念慮が出てきてしまったため、22年初めから地域の総合病院の精神科に入院することになりました。
自分で身の回りのことができなくなり、食も細くなって体力も落ち、入院中の6月には転倒して大腿骨を折ってしまいました。半年ほどの間で、坂を転げ落ちるように動けなくなった母は、入院前には要支援でしたが、要介護3にまで一気に進みました。
一度は退院したものの、うつの症状のせいで意欲もない状態で再入院することに。治療は投薬が中心で、いろいろな薬を試すものの効果が出ません。この治療が合っているのか分からないのですが、環境を変えるのも母には大きな負担になるので、そのまま治療を続けています。
血液の病気は治療の効果が出て安定しており、それ以外の病気もないので、リハビリすれば自宅で過ごせるようになるとは言われたのですが、母がリハビリを拒否してしまうのです。
リハビリのために病院が運営する介護老人保健施設(老健)に一旦入ったのですが、利用できる期限は3カ月間で、間もなく出なければなりません。医師とも相談して、まずはうつをちゃんと治すために再度精神科に入院することになっています。
次の入院期間が終わった後、きっと本格的な介護が始まることになると思うのですが、自宅で介護をするのがいいのか、最適な施設を探したほうがいいのか判断しかねています。