多くの人がいつかは向き合う介護。一人ひとり状況も悩みごとも違っても、話をしたり聞いたりすることで心が軽くなることも。読者の実際の体験や思いを聞き、専門家にコメントをもらいます。一人っ子の亜沙子さんは父の死後に母と同居。骨折して家にいることが増えた母は認知機能も低下してしまいます。「スーパー専業主婦」だった母の変化を見るのはつらいと亜沙子さんは言います。
実家で同居していた80歳の母が風呂場で転んで骨折し、要支援2に。やがて認知機能が落ちてきて、現在は要介護2の認定を受けている。近隣地域に親戚や親しい知人も少ない中、仕事がら出張が多く心配が絶えない。結婚を機に現在は別居し、まめに家事や食事の世話をしながら良い距離感を探る日々。
介護のはじまり
風呂で転んで圧迫骨折
近くに親戚・知人もなく、骨折後は家にこもりがちな母
10年前、父が急逝したのをきっかけに、実家で母との2人暮らしが始まりました。母は基本的に自分のことは1人でできていたのですが、2020年1月に自宅の風呂で尻もちをついて、痛みがひどいので自力でかかりつけの総合病院に行くと腰椎圧迫骨折と診断され、家族を呼ぶように言われたようです。
私は地方出張の多い仕事で、そのときも出張先にいましたが、連絡を受けたときはそんなにひどい状況とは思ってもおらず驚きました。
そこから2カ月ほどほぼ寝たきりの生活になり、整形外科の医師から介護保険の申請をしたらどうかと勧められました。まずは地域包括支援センターへ相談し、いろいろな仕組みや今後の流れを教わりました。ケアマネジャー(ケアマネ)さんを紹介してもらい、介護認定の審査を受け、その時は「要支援2」と認定されました。
もともと両親とも北陸が地元ですが、父は転勤族で千葉県に家を買った途端に転勤になり、父が亡くなるまで他県に住んでいたこともあり近所に親戚も親しい人もいない状況です。
退院後は、私が家を空けて1人になると食事も同じものになりがちになります。家にこもっているより試しにデイサービスに行ってみたらと、ケアマネと相談して週に2回デイサービスを利用するようになりました。
ところが今度はデイサービス施設で転んで、母はもう一度圧迫骨折をしました。症状は前回よりもひどく、家での入浴や自力で食事の用意をするのも難しい状況になりました。
あるとき、私はどうしても出張に行く必要があったので、母に携帯を持たせて初めてショートステイを利用しました。出張前に慌てて準備をして、母が部屋で見られるようにとテレビなども差し入れていたのですが、手違いでそれが母に渡っていなかったようです。夜中に母から電話がかかってきて「帰りたい」「私に恨みがあるんだろう!」と怒鳴られ、さすがにつらいなと思いました。