コラムニスト、作詞家、そしてラジオ、ポッドキャスト番組のパーソナリティーとして同世代の本音を語ってくれるジェーン・スーさん。“女性の成功譚(たん)”を聞きたい、と新著『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』(文芸春秋刊)で、田中みな実さんや一条ゆかりさんなど13人の女性にインタビュー。置かれた場所で咲くだけではなく、どんなときも人生の舵(かじ)を手放さない女性たちの生き方から、「自分が咲ける場所を見つける方法」を考えていきます。

(1)女性の成功には“正解”がたくさんある ←今回はココ
(2)諦めてはいけないのは夢よりも自分自身
(3)セルフプロデュース力を上げるコツ

独自の居場所を見つけた女性たち

 「女の成功譚が聞きたい。女性にはロールモデルが少ない」。それが、新刊を執筆するきっかけだったというコラムニストのジェーン・スーさん。正確に言うと、語り継がれるような成功譚はあるにはあるが、「企業のトップに上りつめた人などの偉業のレベルが高すぎる話か、辛酸をなめて家族のために自分を犠牲にして働いた 『おしん』のような特別な話ばかりで、ちょうどいいのがない」。言われてみれば、確かにその通り。小学校のときの図書室にあったのも、キュリー夫人、ヘレン・ケラー、ナイチンゲール、マザー・テレサら、歴史上の人物の伝記だけだった。

 「キュリー夫人は天才物理学者・化学者でノーベル賞を2つも受賞しているのに、マリーというファーストネームはあまり知られていませんよね。ヘレン・ケラーは社会福祉活動家だったことよりも三重苦を乗り越えた人という印象が強く、ナイチンゲールは統計データを駆使して医療に携わったことよりも白衣の天使という印象を持たれがちで、マザー・テレサは修道女。やはり、たたえられるのは他者に献身する奉仕の姿。決して馬に乗って領土を広げていった女性たちという印象ではないわけで……。女が多くを求められなかった時代を切り開いた先人たちに敬服しつつ、より身近で親しみを感じられる人たちの成功譚を読みたいとずっと思っていたんです。でもないから、自分でやることにした」

「身近といっても本当にすごい人たちばかりなのですが、たくましく生きていく姿に惹(ひ)かれ、足かけ6年の連載で13人に話を聞きました」
「身近といっても本当にすごい人たちばかりなのですが、たくましく生きていく姿に惹(ひ)かれ、足かけ6年の連載で13人に話を聞きました」

 インタビューしたのは身近で活躍する女性たち。美容ジャーナリストでエッセイストの齋藤薫さん、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』などを手掛けた脚本家の野木亜紀子さん、アナウンサーからタレント・俳優に転身した田中みな実さん、料理研究家で食プロデューサーの浜内千波さんなど独自の居場所を見つけた人たち。「どうしてこの人はこんなにもオリジナリティーがあって、自分の居場所があるんだろう」と心惹(ひ)かれた13人だ。そのオリジナリティーはどうやって育まれたものなのか、知りたいと思った。

 「驚いたことに話を聞けば聞くほど、通底しているところがある。時代もきっかけもジャンルも違うのに、どこか同じやり方をしているんですよね」