若手リーダーたちが直面した3つの壁と、それらをどう乗り越えてきたかを聞く連載。今回登場するのは、一般社団法人Social Innovation Japanを立ち上げて、日本で社会課題に取り組む人やビジネスを増やすために活動するマクティア マリコさんです。下編では、マクティアさんが直面するソーシャルビジネスであるが故の壁と、仕事と私生活を両立させる上での壁に対してどのように向き合っているのかについて聞きました。

(上)日本の環境意識に危機感「自信ナシ」を越えて起業した訳
(下)「社会を変えるには自分もwellに」ある起業家の決意 ←今回はココ

ファーストペンギンになりたい組織に見つけてもらえるよう工夫

 一般社団法人Social Innovation Japan(ソーシャル・イノベーション・ジャパン、SIJ)を立ち上げ、使い捨てプラスチックの消費削減をミッションとした日本初の無料給水アプリとプラットフォーム「mymizu」も運営するマクティア マリコさんは、現在、ソーシャルビジネスであるが故の「事業拡大の壁」に直面しているという。

 「主な事業内容は、個人・組織向けのワークショップやセミナーの開催や、無料でマイボトルに給水できる場所を探せるアプリの開発。どのようにマネタイズをし、持続可能な事業へと成長させていくかが次の課題です」

 そのためにマクティアさんは、主に3つの取り組みを進めている。1つ目は、mymizuに関心を持つ自治体や企業と一緒に、事業を拡大させるための仕組みづくり。mymizuの事業に意義を見いだせても、大きな収益を見込みづらいことからコラボレーションするのが難しいという組織もいるため、既に課題意識があり、すぐに行動できる準備が整っている自治体や企業を呼び寄せる工夫をしたと言う。

マクティア マリコさん
マクティア マリコさん
1989年生まれ。英ロンドン大学卒業後、中日新聞社ロンドン支局に務め、2014年に駐日英国大使館の国際通商部に勤務。17年に一般社団法人Social Innovation Japanを共同創設し、現在その運営やサステナビリティー関連プロジェクトを総括する。その一環として、19年から使い捨てプラスチックの消費削減をミッションとしたプラットフォーム「mymizu」を運営。アプリ登録者数は約20万人

 「これまで自治体や企業と話す中で、『日本の消費者が求めていない』ことがコラボの壁になってしまったケースもありましたが、私たちに興味・関心を持つ自治体や企業は少なくない、とも気づいたんです。そこで、『mymizuでは○○をやります。仲間になりませんか』といったメッセージを発信して、あえて社会変革を起こすファーストペンギンになりたいと思っている組織を呼び寄せることにしました。

 すると、2カ月もたたないうちに、いろいろな自治体や企業から問い合わせがありました。集まってくる自治体や企業は、環境問題に取り組もうと計画している段階にあり、私たちとコラボすることでより具現化できるだろうと考えているところが多い。失敗することもありますが、共通目的を持つことで、コラボ企画もスムーズに進むようになりました。

 大事なのは、今、興味・関心を持ってくれている組織とコラボ事例を着実に積み上げていくこと。他の組織に『自分たちもやってみたい』と思ってもらえるような事例をつくっていくことで、次につなげていけたらいいですね」