2013年より施行された「いじめ防止対策推進法」には、いじめが発生した場合に学校側が講ずるべき措置などが明記されています。しかし、現実には「子どもがいじめられていることを先生に相談しても学校側が動いてくれなかった」という声も多く聞かれます。わが子がいじめられていることが分かったとき、親は学校側にどのように話をするとよいのでしょうか。前編に続き、これまでに1万件以上ものいじめ相談を受け、解決へと導いてきた「いじめ探偵」こと、NPO法人ユース・ガーディアン代表理事の阿部泰尚さんに聞きました。

<いじめ探偵・阿部泰尚さんインタビュー>
【前編】民間探偵がネットいじめ解決 子と親から依頼殺到の理由
【後編】いじめ探偵に聞く 学校側がいじめに対応しないときは ←今回はココ

いじめに関して「私立校なら安心」とは限らない

 いじめのニュースを見聞きする際、いじめ被害者が公立校に通っているケースが多いのではと思ってしまうかもしれません。しかし、本業の探偵業と並行して子どものいじめ問題の解決に無償で取り組むNPO法人ユース・ガーディアン代表理事の阿部泰尚さんによると、「いじめは私立校でも起こっており、私立校に入学させれば安心というわけではない」とのこと。

 「私立校はマイナスイメージが付くことを嫌うため、いじめの事実を認めたがらないケースが多いです。ユース・ガーディアンに寄せられた相談では、私立校の場合だと『中高一貫校』で『東大に進学する子があまりいない学校』や『大学の付属ではない学校』で発生した案件が比較的多いように感じますが、実際にそのゾーンに該当する私立校数のボリュームが大きいからかもしれません。もちろん例外もあり、いじめはどの学校でも起こり得ると言えるでしょう」

 子どもがいじめられていることが判明したら、前編の記事「民間探偵がネットいじめ解決 子と親から依頼殺到の理由」で紹介したような方法で、これまでの経過の情報や証拠を集め、それらを基に学校側に相談することとなります。学校側との話し合いを進める際は、公立校か私立校かでいじめ問題の責任の所在が異なることを理解しておく必要があると阿部さんは言います。

 「基本的に公立の小・中学校は市区町村の教育委員会、高校は都道府県の教育委員会の管轄となるため、いじめの問題を学校側に訴えても取り合ってもらえない場合は、教育委員会に働きかけることもできます。一方、私立校は教育委員会の管轄外となり、いじめ問題に関する責任者は学校法人の理事長です。学校側に相談する前の時点で、そのような組織の構造を理解しておくとよいでしょう。

 そのためには、各学校のいじめ防止基本方針や地方自治体のいじめ防止条例をよく読んでおく必要があります。また、いじめ防止対策推進法(※)にも目を通し、学校側に課されている義務について理解しておくと、学校側の対応が不適切だった場合にも法律の内容に触れながら冷静に話し合いを進めやすくなります」

 次のページからは、学校側にいじめの相談をする場合の連絡手段や、学校側が対処してくれない場合の相談先などについて詳しく聞いていきます。

※いじめ防止対策推進法…子ども間のいじめに対して、適切に対処すべく基本的な理念や体制を定めた法律。これにより、各学校は「いじめ防止基本方針」を策定し、校内にいじめ防止等の対策のための組織を設置する義務を負う。文部科学省によって2013年に制定、施行された

この記事で読める内容
・学校側へのファーストコンタクト時の注意点は?
・学校側との話し合いの際に持参すべきものは
・話し合いの際、先生に対して絶対やってはいけないこと
・公立校と私立校、それぞれで取るべき行動が異なる
・いじめ問題、真の最終ゴールは
通称「いじめ探偵」のNPO法人ユース・ガーディアン代表理事の阿部泰尚さん
通称「いじめ探偵」のNPO法人ユース・ガーディアン代表理事の阿部泰尚さん