2022年に実施された「全国学力・学習状況調査(学力テスト)」では、例年高い順位をキープしている石川県、秋田県、福井県などが、今回も小・中学校ともにトップクラスを維持する結果となりました。これらの県の子どもたちは、なぜ毎年、全国平均よりも大幅に高い平均正答率を記録することができるのでしょうか。長年にわたり、秋田県の教育に関する調査・提言を行ってきた秋田大学名誉教授の阿部昇さんに、秋田県における学力向上の取り組みや、学力上位県に共通する特徴について聞きました。
<学力上位県の秘訣 秋田大学名誉教授インタビュー>
【前編】学力上位県 秘訣は「探究型授業」と「家庭学習ノート」 ←今回はココ
【後編】低下する子どもの読解力と記述力 家庭でできる対策は?
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質の高い「探究型授業」と「共同研究システム」
全国の小学6年生、中学3年生を対象に行われている「全国学力・学習状況調査(※1)」。通称「学力テスト」と呼ばれる文部科学省が毎年実施する学力調査で、2022年度は国語、算数・数学、理科の3教科の学力調査が実施されました。
※1 全国学力・学習状況調査……文部科学省が、全国の国・公・私立学校に在籍する小学6年生と中学3年生の全児童生徒を対象に実施。義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題の検証と改善を図る目的で2007年に開始された。調査対象の教科は国語、算数・数学に加えて12年度から理科、19年度から英語が追加され、理科と英語は3年に1度程度、実施される
22年度の調査結果で、47都道府県別の平均正答率を見たところ、秋田県の教科別順位は以下の通りでした。
全国1位……【小学校】国語、理科 【中学校】国語
全国3位……【小学校】算数 【中学校】理科
全国4位……【中学校】数学
小学校と中学校、ともにすべての教科でトップクラスの成績を残している秋田県。07年調査開始当初よりトップクラスを維持し続けるも、県内の学習塾や家庭教師の利用率は小学校が25.3%、中学校が36.2%と、全国の公立校の平均(小学校47.4%、中学校63.5%)と比べて極めて低くなっています(※2)。なぜ成績上位県であり続けることができるのでしょうか。
※2 令和3年度「全国学力・学習状況調査」の「児童質問紙」「生徒質問紙」の項目「学習塾の先生や家庭教師の先生に教わっていますか(インターネットを通じて教わっている場合も含む)」の結果をもとに算出
秋田県の子どもの学力が高い理由の一つとして、「子どもの話し合いや意見交換を重視した『探究型授業』が多く行われていることが挙げられる」と、秋田県教育委員会と共に12年間、秋田県の学力向上について調査や提言を行ってきた阿部昇さんは言います。
「『探究型授業』とは、子ども同士が対話をすることで課題を解決していくスタイルの授業です。授業の最初に学習課題を決め、子どもが各自ひとりで考えた後、グループやクラス全体で意見交換をして、最後にまとめや振り返りをする。秋田県では、ほとんどの教科で、このようなスタイルの『探究型授業』が行われています。このように授業で自分の思考を深めていくプロセスをたくさん経験しているので、秋田の子どもたちは自分の考えを言葉にしてまとめる記述式の設問にも強いのです」
阿部さんによると、07年に第1回の全国学力・学習状況調査が行われた時点で、既に秋田県では話し合いや意見交換を大事にする授業が行われていたとのこと。「こうした授業スタイルを『探究型授業』と名付けたのが15年ごろで、16年の中央教育審議会答申で『主体的・対話的で深い学び』についての言及がなされた際は、秋田で実践してきた教育のスタイルが全国的に認められたという思いがありました」

「探究型授業」は、教科書の内容を教師が一方的に教えるというものではありません。質の高い授業システムを支える秘訣はどこにあるのでしょうか。
・教師の授業へのプライドを支えるものとは
・学力上位3県のうち秋田と石川は探究型。では福井は?
・成績上位県の取り組みに共通する2つのこと
・子どもの学力向上を後押しするのは
・低学年から「自分で学習計画を立てる力」を付けさせる「家庭学習ノート」
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